【語頭の /l/ が暗いサンプル】アメリカ英語の「語頭の暗い /l/」について

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この記事を書いた人

サラ

英語ジム らいおんとひよこ®代表
・コロンビア大学 大学院卒:英語教授法修士
・ETS (Educational Testing Service) 米国本社の元問題作成者

 

らいおん

突然ですが、life の発音が wife のように聞こえたことはありませんか?
今日は /l/ の発音について少し深掘りします。

ひよこ

この記事は生徒さんとのレッスンでふと気になったことの備忘録です。解説記事というよりはメモ記事になりますので、内容に関しての僕の断定的な結論はありません🤓

 

アメリカ英語の「語頭の割にかなり暗め」の /l/

アメリカ英語の /l/ の発音で僕がよく気になることがあります。それは、

アメリカ英語発音で、life のような語頭の母音の前の /l/ の音質が「語頭の /l/ の割にかなり暗い」

場合をしばしば耳にするということです。

 

/l/ のアメリカ英語とイギリス英語の音質:竹林滋著『英語音声学』(研究社)

life, light, leave, lack など、語頭の母音の前の /l/ は「明るいL」だ、と聞いたことがある人も多いと思いますが、一般に、アメリカ英語の /l/ はイギリス英語よりそもそも暗めである、と言われていて、いくつかの明るさレベルがあります。

例えば、竹林滋著『英語音声学』(研究社)では、/l/ を

  • 明るいL(clear or light l)
  • 暗いL(dark l)
  • 中性のL(neutral l)

3つに分類していますが、同書のP.207〜208を少し引用すると、以下のような記述があります。

/l/ の明るさ、暗さの程度はGAとRPとで相違があり、一般にGAのほうがRPよりも暗さの程度が大きい。 

*下線は僕が追加しています。

母音の前の /l/ 

舌の構えはGAとRPでは多少異なり、GAのほうがやや舌面が後ろ寄りになる。このためGAの /l/ はRPの /l/ ほど明るくない。標準的な舌の位置はGAでは中性のLないし多少明るいLRPでは明るいLであるが、後続の母音の性質によって変動する。leap… let… のように前舌母音が続きときは明るさの程度が高く、逆に loop… law… のように後舌母音の前では暗さが増しluck… learn… のように中舌母音の前では両者の中間である。

*下線は僕が追加しています。

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life が wife に近く聞こえる?

さて、母音の前の /l/ でも特にアメリカ英語では /l/ が暗めであることはなんとなくお分かりいただけたと思います。しかし、これだけではピンとこないで

「母音の前の /l/ が暗いって実際にはどういう感じ?」

と思うのが普通だと思います。

それがこの記事を書こうと思った理由ではあるのですが、例えば、life のような語頭の /l/ がだいぶ暗めに聞こえることがアメリカ英語ではしばしばあり、極端な話、

life が wife に近く聞こえたりする

ことがあります。もちろん、wife と完全に同音というわけではなく、聴覚的に「w が混ざったような感じで少し wife 気味に聞こえる」という感じです。

 

「語頭の割にかなり暗め」/l/

例えば以下の2つの音源の life を聴いてみましょう。僕の感覚だと以下2つは「語頭の /l/ の割にかなり暗め」のサンプルだと感じます。1.0倍と0.4倍の音源を載せたので、ぜひ0.4倍の方も聞いてみてください。

1つ目の女性の方の life は、0.4倍で聞くと特に暗く「w が混ざったような感じ」「少し wife 気味に聞こえる」という印象を持つかもしれません。

1.0倍速:in all phases of life…

引用元YouTube

0.4倍速:all phases of life…

この女性の life は僕としてはアメリカ英語でよく聞く語頭の /l/ の暗さかな、という印象ですが、0.4倍のスローでは特に wife 気味に聞こえる気がします。

サラ

もう一ついきましょう。以下の男性の音源も語頭の割に暗く聞こえるのではないでしょうか?

1.0倍速:We all may be in different phases of life…

引用元YouTube

0.4倍速:phases of life…

 


いかがでしょうか?僕の耳にはこれらの life は

「アメリカ英語っぽい語頭の暗めの /l/」

に聞こえます。

このような /l/ が、例えば前述した竹林滋著『英語音声学』(研究社)の分類では「中性のL(neutral l)」に分類されるのか、それとも他のLとして分類されるべきなのか、僕には分かりません。しかし、これら2つのサンプルはけっこう暗めだな…と感じる語頭の /l/で、

「多少明るいL」や「明るいL」というより、「中性のLにも近い暗いL」

くらいなのではないかと個人的には思います。上記サンプル音源の life を、

  1. 「アメリカ英語っぽい」と感じる
  2. 「アメリカ英語では語頭の /l/ でこのくらいの暗さは平均だ」と感じる
  3. 「アメリカ英語でもだいぶ暗い /l/ なのでは?」と思う
  4. 「アメリカ英語の暗さ加減の中でも暗めに寄っている /l/ だが、まぁまぁ普通に聞く暗さ」と感じる
  5. 「アメリカ英語でも明るめな /l/ 」と感じる
  6. 「イギリス英語でも語頭の /l/ でこのくらいの暗さは普通だ」と感じる
  7. 「アメリカ英語っぽい」とか「イギリス英語っぽい」とか、この life の /l/ の加減だけでは分からない
  8. その他

1〜8の中ではどうでしょうか?もしコメントやご意見があれば僕のYouTubeやXでぜひお知らせください。ちなみに僕の感覚では1と4です。

/l/ の暗さにはかなり個人差や単語差がありますが、アメリカ英語発音では話者によってはこのくらいの暗さの発音を聞くことが多い気がする、という感覚です。

ひよこ

 

leave が weave に聞こえる?life が wife に聞こえる?

このことに関連して、竹林滋著『英語音声学』(研究社)でも以下のような記述がありました。

らいおん

アメリカのニュースを聞いていても、様々な語で語頭の /l/ が「かなり暗め」で w 気味に聞こえるときが普通にある気がします。
/l/ は現れる環境によって音質がかなり変化するので、さまざまな要因が影響している可能性もありますが、また何か気づきがあれば加筆したいと思います。

ひよこ

あわせて読みたい
なお、この記事では「語頭の /l/」についてのみお話ししました。「語末の /l/」など、「Lの発音の全体像」は 以下の記事で詳しく解説しています。 【どこよりも詳しく解説】英語のLの発音の仕方・コツ:「暗いDark L」「明るいClear L」の違いまで

また音源再生は音声再生プレーヤー『Eurythm(ユリズム)』を使用しています。使い方は以下動画をご覧ください。

 

中性のL(neutral l)

なお、今回は life のような「語頭」における /l/ について紹介しましたが、語頭以外でも現れます。中性のL(neutral l)に関しては J.C. Wells著『Accents of English』P.490などでも扱われています。気になる人は読んでみましょう。

アメリカ英語の /l/ が “rather dark” なのは、

valley, jelly, rely のように母音に挟まれた環境で特に顕著

なようです。

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ただし、J.C. Wells著『Accents of English』はかなり難易度が高いので以下の書籍あたりを読むことをお勧めします。

サラ

 

発音・音声学書籍リスト

僕が読んでいる発音本・音声学書籍は以下の記事にリストにしてまとめていますので興味がある人はぜひご覧ください。

らいおん

数が多いので少しページが開くのに時間がかかる場合もありますが、開きます!
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