Shakespeare時代のイギリス英語発音:OP(Original Pronunciation)とR音 rhoticity

この記事を書いた人

サラ

英語ジム らいおんとひよこ®代表
・コロンビア大学 大学院卒:英語教授法修士
・ETS (Educational Testing Service) 米国本社の元問題作成者

 

シェイクスピア時代のイギリス英語R音を発音していた:rhotic

この記事ではシェイクスピア時代のイギリス英語について簡単に触れたいと思います。実はシェイクスピア時代のイギリス英語では ears などのR音を発音していたことをご存知でしょうか?

このようにR音を発音することを rhotic であると言いますが、このことについて軽くお話します。

NOTE
rhotic の発音は /ˈroʊtɪk/ (アメリカ英語)/ˈrəʊtɪk/ (イギリス英語)です。

 

R音を発音すること = rhotic

イギリス英語発音の大きな特徴として、 「アメリカ英語にあるR音の発音がない」と捉えている学習者も多いと思います。つまり、arm などのR音を発音しない、という特徴です。

NOTE
イギリス英語といっても様々で、R音を発音する地域も普通にありますが、この記事では多くの学習者がイメージしているイギリス南部の標準的イギリス英語について話します。

一般的なアメリカ英語では arm, farm, bird などでR音を発音します。このようなR音を発音することを前述の通り

rhotic

アクセントと呼びます。

名詞は rhoticity で「R音性」と呼ばれることもあります。

 

R音を発音しないこと = non-rhotic

一方で、現在のイギリス南部標準発音のように arm などのR音を発音しないことを

non-rhotic

アクセントと呼びます。

イギリス英語と言えば、non-rhotic なので、歴史的に見てもイギリス英語ではずっとR音は発音しないことが当たり前だ、と考えている学習者も多いと思います。

しかし、本記事冒頭で言ったように、イギリス英語がRで音なしの non-rhotic になったのは実は比較的最近のことで、シェイクスピア時代のイギリス英語ではR音は普通に発音されていました。

このことに関して、以下のツイート内にあるPractical English Phonetics and Phonologyの記述にある通り、David  Crystalという言語学者の功績が大きいと言われています。

 

David  CrystalによるOP (Original Pronunciation)の解説YouTube

Crystal 本人による以下の解説動画が素晴らしいので紹介します。なお、シェイクスピア時代の当時の発音は OP (Original Pronunciation)と呼ばれます。

 

Original Pronunciationでないと全体の3分の2の韻が成立しない

David  Crystalによると、現代英語の発音でShakespeareの劇をやろうとすると、OPで本来韻を踏んでいたであろう3分の2の韻は失われてしまうそうです。

つまり、

OP発音でないと全体の3分の2の韻が成立しない

ということが分かったそうです。

 

シェイクスピア時代のイギリス英語はむしろ現代アメリカ英語に近い?

以下のnote記事にもシェイクスピア時代のイギリス英語の特徴の一部の解説がありますが、この時代のイギリス英語はむしろ現代アメリカ英語の特徴に近いという見方もできます。

安井稔『英語教育の中の英語学』大修館書店では、

「少し大胆な言い方をするなら、アメリカ発音に現在見られる特徴はすべて古いイギリス英語のなごりであるといってもよい」

と述べているそうです。

 

Shakespeare時代のOriginal Pronunciationの推定と再建

最後に、「いかにして Shakespeare の発音を推定するか」という記事によるとShakespeare時代ののオリジナル発音を推定(または再建) しようとする時、頼りになるのは

  • 綴字 (spelling)
  • 脚韻 (rhyme)
  • 地口 (pun)
  • 同時代の作家のコメント

という4つの要素だそうです。

最近の発音の変化もアメリカ英語よりもイギリス英語の方が発音変化はずっと大きいと感じますが、発音の歴史的変遷は興味深いですね!

サラ

 

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