辞書に加えて参考にしている「冠詞の書籍」たち
サラ
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Universityを含む大学名:どんなときにtheはつける?
この記事では英語で大学名を表すときの「the の有無」について簡単に解説します。
例えば、「ハーバード大学」を英語で言いたいとして、以下のどれが正しいでしょうか?
1. University of Harvard
2. the University of Harvard
3. Harvard University
3. the Harvard University
らいおん
Universityを含む大学名の冠詞の有無:ポイント
結論から言えば「ハーバード大学」は
3 Harvard University が正しい言い方
です。
この記事ではなぜ3が自然な言い方かを説明していきますが、少しややこしいところもあるので、先にこの記事のポイントを以下に箇条書きでまとめておきましょう。
最大のポイントは、
- 「the University of X」型
- 「X University」型
の大きく2つの言い方があることと、
大学名が「地名」を含んでいるかを見極める
です。
- 「the University of X」型と「X University」型の2通りで言える場合が多い
- 「X University」型のみの大学もある
- 基本的に「X University」型で表す
- Xには地名でない固有名詞や人名などがくる
さらに以下の6つのポイントについて見ていきます。
- 「the University of X」型 では基本的にXに「地名」がくる:例 → the University of Oxford
- 「the University of X」型は the を伴う。
- 「the University of X」は正式名称で書きことばなどで使われることが多い。
- 「the University of X」は口語などでは「X University」と言えることも多い:the University of Oxford=正式名称、Oxford University=より口語的
- Xに「地名でない固有名詞」や「人名」などを伴う場合は「X University」型を用いる:例 → Harvard University, Rikkyo University, Brown University
- 「X University」型は the を伴わない:(☓)the Harvard Universityなどと言わない
ひよこ
ただ、この記事で解説しているポイントを覚えておけば、大学名の冠詞についてかなりスッキリするはずです!
サラ
大学名にofがつくときはtheが必要:the University of X
まず「the University of X」型から見ていきましょう。つまり、「大学名に of がつくとき」です。
このタイプのポイントは以下の3つです。
- 「the University of X」型は the を伴う。
- 「the University of X」は「X University」と言えることも多い
- 「the University of X」は正式名称で書きことばなどで使われることが多い。
らいおん
ウィズダム英和辞典第3版では、
universityがof句を伴う場合はtheを用いる
という記載があり、
the University of Michigan:ミシガン大学
という例を挙げています。
つまり、
「the University of X」の形になっている場合は the が必要
ということです。
the University of Xの例
正保富三著「英語の冠詞がわかる本 改訂版」では、この「the University of X」パターンとして、
- the University of Pennsylvania:ペンシルバニア大学
- the University of British Columbia:ブリティッシュコロンビア大学大学
などの例を、ジーニアス英和辞典第6版では
-
the University of Chicago:シカゴ大学
などの例を挙げています。
X Universityのタイプはtheを用いない
次に、「the University of X」というタイプの大学はしばしば
「X University」という言い方も可能
です。
ジーニアス英和辞典第6版では「オックスフォード大学」で
the University of Oxford
=Oxford University
の2通りの言い方が可能としています。
「the University of X」と「X University」の違い
では、the University of Oxford と Oxford University の「違い」はあるのでしょうか?
このことに関してジーニアス英和辞典第6版では
前者が「正式名称」
と補足しています。
ひよこ
さらに、樋口昌幸著「例解 現代英語冠詞事典」を見ると、
of-phrase をともなう大半の大学名は the をとる。
書きことばでは the University of X のパタンが好まれる(Heaton & Turton 1987: 281)。
という解説があります。
東京大学の英語名は?:the University of Tokyo
同様に、正保富三著「英語の冠詞がわかる本 改訂版」で、
東京大学は正式には the University of Tokyo で、口語的には Tokyo University である
とあるように、「東京大学」は正式には the University of Tokyo で東大のホームページにもこの名称が使われています。
「the University of X」のタイプではX=地名
さて、ここで1つ注意したいことがあります。それは、
「the University of X」のタイプでは基本的に X に「地名」を表す語を伴う
ということです。
このことについてジーニアス英和辞典第6版では
the University of … の言い方は地名を表す語でない時は不可:
(〇)Rikkyo University
(☓)the University of Rikkyo
という解説をしています。
らいおん
他の例も見てみましょう。例えば安藤貞雄著「現代英文法講義」では、「固有名詞+普通名詞」の形式をもつ名詞句で the をとらない例として
- Harvard University:ハーバード大学
- Yale University:イェール大学
などを例に挙げています。
つまり、先ほどの立教大学と同様、「ハーバード大学」や「イェール大学」の「ハーバード」や「イェール」は地名でないので、「the University of X」型にはならず、
(☓)the University of Harvard
(☓)the University of Yale
とはならないということです。
さらに、Harvard University型が、つまり「X University」型は基本的に the を伴わないため、
(☓)the Harvard University
(☓)the Yale University
とも普通言いません。
大学の正式名称と通称が若干異なる場合も
ところで、大学の正式名称と通称が若干異なる場合も少なくありません。例えば、「コロンビア大学」はニューヨークにありますが、「地名」を含んだ大学ではないため、
(☓)the Columbia University
とか
(☓)the University of Columbia
とはならず、「X University」型で
(〇)Columbia University:コロンビア大学
となりますが、
Columbia University in the City of New York が正式名称
です。
ひよこ
- 「the University of X」型 では基本的にXに「地名」がくる:例 → the University of Oxford
- 「the University of X」型は the を伴う。
- 「the University of X」は「X University」と言えることも多い
- 「the University of X」は正式名称で書きことばなどで使われることが多い。
「the University of X」は有名大学が多い?
さて、ここから少し応用なのですが、「the University of X」の形は樋口昌幸著「例解 現代英語冠詞事典」では、
学校名が the をとるかとらないかは慣例によるところが大きいが、the がつけられる場合は広範囲から生徒が集まる、有名な、つまり、(the によって)同定可能な学校という含みがあると思われる
という記述があります。
「the University of X」は「その地域に属している」ということが強く意識される用法になり、「地名」を冠している国立大学や州立大学、市立大学が多いと言えるかしれません。
逆に言うと、私立大学や、「地名」が含まれていない大学は「X University」の形が多くなります。
大学名の the の有無:例外やインターネット表記に注意
ここまでで、大学名の the の有無について、原則を解説しました。ただ、例外もそれなりにあるので絶対にこのルールが当てはまるわけでないことに注意しましょう。
また、歴史的背景が大学名に関係している場合などもありますし、インターネット上の表記が揺れている場合もあります。
例えば、樋口昌幸著「英語の冠詞 その使い方の原理を探る」では、「オハイオ州立大学」について、
インターネット上では、(the)Ohio State University のように、地名/人名で始まる大学名に the がつけられることもあります
と補足しています。
ひよこ
らいおん
ただし正式にはやはり「the University of X」であることはしっかり覚えておこう!
サラ
総合大学でのスクール名
最後に補足です。特に総合大学でいくつも学部があるとき、その大学に通っている学生は、大学の正式名称などでなく、スクール名で大学を呼ぶことも少なくありません。
例えば「ロンドン大学」は多くの辞書で the University of London や London University と記載されていますが、実際に卒業された方は
「UCL」「キングス」「インペリ」などの愛称があり、「ロンドン大学」とまとめて呼ぶのを好まず、基本的にスクール名で呼ぶ
と言っていました。
まとめ:Universityを含む大学名の冠詞の有無
お疲れ様でした!本記事冒頭で紹介したポイントを以下にも載せるのでぜひ整理しておきましょう!
- 「the University of X」型と「X University」型の2通りで言える場合が多い
- 「X University」型のみの大学もある
- 基本的に「X University」型で表す
- Xには地名でない固有名詞や人名などがくる
- 「the University of X」型 では基本的にXに「地名」がくる:例 → the University of Oxford
- 「the University of X」型は the を伴う。
- 「the University of X」は正式名称で書きことばなどで使われることが多い。
- 「the University of X」は口語などでは「X University」と言えることも多い:the University of Oxford=正式名称、Oxford University=より口語的
- Xに「地名でない固有名詞」や「人名」などを伴う場合は「X University」型を用いる:例 → Harvard University, Rikkyo University, Brown University
- 「X University」型は the を伴わない:(☓)the Harvard Universityなどと言わない
さらに知識を深めよう!
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