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/ɑ/と/ɒ/と/ɔ/の発音の区別
まずは結論から具体的に見ていきましょう。本サイトでは標準的なアメリカ英語の /ɑ/と /ɒ/ と /ɔ/ の発音は以下のように区別することを推奨します。
- father /fɑːðɚː/
- hot /hɑːt/
- pot /pɑːt/
- god /gɑːd/
- Tom /tɑːm/
- cot /kɑːt/
- talk /tɒːk/ or /tɑːk/
- all /ɒːl/ or /ɑːl/
- call /kɒːl/ or /kɑːl/
- falt /fɒːlt/ or /fɑːlt/
- autumn /ɒːtəm/ or /ɑːtəm/
- caught /kɒːt/ or /kɑːt/
- daughter /dɒːtɚː/ or /dɑːtɚː/
- cause /kɒːz/ or /kɑːz/
- sauce /sɒːs/ or /sɑːs/
- loss /lɒːs/ or /lɑːs/
- lost /lɒːst/ or /lɑːst/
- cloth /klɒːθ/ or /klɑːθ/
- dog /dɒːg/ or /dɑːg/
- law /lɒː/ or /lɑː/
- saw /sɒː/ or /sɑː/
らいおん
ひよこ
- regulatory /ˈreɡjələtɔːri/
- laboratory /ˈlæbrətɔːri/
- category /ˈkætəɡɔːri/
- caught /kɔːt/ (NY, Boston, New Englandなど東海岸アクセントなど)
talk と all の発音は /tɔːk/ /ɔːl/ でよいか?
ほとんどの辞書が talk と all の発音は /tɔːk/ と /ɔːl/ という表記を採用しています。しかし、アメリカ英語では talk や all は純粋な「オー」の発音にならず、舌の位置が日本語の「オー」よりかなり下がり、アゴが落ち、多かれ少なかれ「アー」の音色が混じります。
例えば以下の Oxford Learner’s Dictionary の talk のイギリス英語とアメリカ英語表記をご覧ください。
青のスピーカーがイギリス英語で、赤のスピーカーがアメリカ英語ですが、全く同じ発音表記になっているのが分かります。
では実際の音声を以下で聞いてみましょう。
いかがですか?全く同じ発音表記になっているにもかかわらず、明らかに英米で音質が違います。
これほどまで音質が異なるにもかかわらず、アメリカ英語の talk を /tɔːk/ で表記するのは学習者が混乱する原因になると思います。
ひよこ
よって、この時に「アー」と「オー」の中間音である /ɒ/ の記号が必要になり、talk や all は /tɒːk/ や /ɒːl/ と表記できます。
らいおん
cot-caught merger とは
上記の発音表記を見て、talk や all が /tɒːk/ や /ɒːl/ になることは理解できても、なぜ talk や all が father の /ɑː/ の母音と同じ /tɑːk/ や /ɑːl/ となるのか疑問に思う人もいるでしょう。これを理解するには cot-caught merger という現象を理解する必要があります。
アメリカ英語では、西海岸の若い世代を中心に cot と caught を /kɑːt/ で全く同じ音で発音する人が多くいます。この現象を cot-caught merger と言い、このように cot と caught を “merge” させ、区別しない話者は talk や all の母音に father の /ɑː/ の母音と同じ音をあて /tɑːk/ や /ɑːl/ と発音します。
詳しくは以下の記事もご覧ください。
参考 cot-caught mergerWikipedia
cot-caught merger の発音マップ
Harvard Dialect Survey では、約40%のアメリカ人が cot と caught を同じ音で発音したと報告されています。以下がその分布マップです。
らいおん
初級英語音声学 P.84では /ɒː/と/ɑː/が同じに発音される地域について以下のようなマップを紹介しています。
さらに、/ɒː/と/ɑː/が同じに発音になるのは特に西海岸の若い世代で顕著だとされていますが、英語音声学入門では以下のマップを紹介しています。
ひよこ
/ɑː/ の発音
/ɑː/ の発音
pot, god, father, Chicago, Tom
- 英語の母音の中で最も口の開きが大きく舌の位置が低い音です。
- 下顎(あご)を下げ、日本語の「アー」よりも口を大きく開け、喉に近いところで「アー」(「ア」)と発音します。
- 唇を丸めず、口を縦に大きく開けて発音しましょう。
なお、ɑ は非円唇・後舌母音で、ɒ は円唇・後舌母音です。
らいおん
father, calm, palm などを /ɑː/ とし、box, not, top を /ɑ/ として区別している辞書もありますが、本ページでは全て /ɑː/ で統一します。
/ɑː/ の発音を含む語
- pot
- god
/ɑː/ のみ発音
- /ɑː/
/ɒː/ の発音
/ɒː/ の発音
talk, all, saw, autumn, law
- 「アー」と「オー」の中間の音を出すイメージで、日本語の「オー」よりも唇を少し丸め、口を縦に大きく開き発音します。
- 舌は日本語の「オー」よりはかなり低い位置にきます。
- アメリカの特に西部では若い世代を中心に /ɒː/ の音を /ɑː/ であてる人も多くいます。その場合、cot と caught は全く同じ発音となります。
厳密に言うと /ɒː/ は /ɔː/ よりも若干舌の位置が低いです。以下の単語は、アメリカ英語では舌がかなり低く、ア寄りに聞こえます。
/ɒː/ の発音を含む語
- talk
- all
/ɒː/ のみ発音
- /ɒː/
アメリカ英語の母音解説
上級:アメリカ英語で /ɑː/ と /ɔː/ の可能性がある語
最後に、以下は /ɑː/ と /ɔː/ の可能性がある語ですが、個人差、地域差が大きく、/ɑː/ が好まれたり /ɔː/ が好まれたりする注意したい語です。
- borrow
- sorrow
- tomorrow
- orange
- forest
- Florida
- moron
- Oregon
- oracle
- sorority
- sorry
らいおん
ひよこ
Paul Carley著 American English Phonetics and Pronunciation Practiceの解説
Paul Carley著 American English Phonetics and Pronunciation Practiceでも上記の単語などを以下のように取り上げています。
らいおん
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