/ɑ/と/ɒ/と/ɔ/の発音の違い:cot-caught mergerとは

らいおん

この記事ではアメリカ英語で非常に複雑といえる/ɑ/と/ɒ/の発音の違いについて簡単に整理するよ!
そもそもアメリカ英語で /ɒ/という発音記号を採用している辞書が皆無だけど、発音の知識が増え、上級になればこの /ɒ/ の記号は必須だというのが本サイトの考え方だよ!

ひよこ

この記事を書いた人

サラ

英語ジム らいおんとひよこ®代表
・コロンビア大学 大学院卒:英語教授法修士
・ETS (Educational Testing Service) 米国本社の元問題作成者

 

/ɑ/と/ɒ/と/ɔ/の発音の区別

まずは結論から具体的に見ていきましょう。本サイトでは標準的なアメリカ英語の /ɑ/と /ɒ/ と /ɔ/ の発音は以下のように区別することを推奨します。

/ɑː/の発音の語
  1. father    /fɑːðɚː/
  2. hot      /hɑːt/
  3. pot     /pɑːt/
  4. god      /gɑːd/
  5. Tom     /tɑːm/
  6. cot        /kɑːt/
/ɒː/と/ɑː/どちらの発音もある語
  1. talk       /tɒːk/  or  /tɑːk/
  2. all         /ɒːl/  or  /ɑːl/
  3. call          /kɒːl/  or  /kɑːl/
  4. falt          /fɒːlt/  or  /fɑːlt/
  5. autumn      /ɒːtəm/  or  /ɑːtəm/
  6. caught        /kɒːt/  or  /kɑːt/
  7. daughter       /dɒːtɚː/  or  /dɑːtɚː/
  8. cause      /kɒːz/  or  /kɑːz/
  9. sauce      /sɒːs/  or  /sɑːs/
  10. loss       /lɒːs/  or  /lɑːs/
  11. lost        /lɒːst/  or  /lɑːst/
  12. cloth      /klɒːθ/  or  /klɑːθ/
  13. dog       /dɒːg/  or  /dɑːg/
  14. law        /lɒː/  or  /lɑː/
  15. saw      /sɒː/  or  /sɑː/

らいおん

本サイトでは基本的にこれらの語に/ɔː/の音をあてるのをおすすめせず、上記表記を推奨します。ちなみに上記発音表記は全てグランドセンチュリー英和辞典第4版の表記と一致するよ!
グランドセンチュリーは発音表記に関して最もおすすめできる辞書だよ!

ひよこ

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/ɔː/の発音の語
  1. regulatory      /ˈreɡjələtɔːri/
  2. laboratory    /ˈlæbrətɔːri/
  3. category      /ˈkætəɡɔːri/
  4. caught             /kɔːt/  (NY, Boston, New Englandなど東海岸アクセントなど)

 

talk と all の発音は /tɔːk/ /ɔːl/ でよいか?

ほとんどの辞書が talk と all の発音は /tɔːk//ɔːl/ という表記を採用しています。しかし、アメリカ英語では talk や all は純粋な「オー」の発音にならず、舌の位置が日本語の「オー」よりかなり下がり、アゴが落ち、多かれ少なかれ「アー」の音色が混じります

例えば以下の Oxford Learner’s Dictionary の talk のイギリス英語とアメリカ英語表記をご覧ください。そしてそれぞれの音源を再生してみてください。全く同じ表記になっているにもかかわらず、明らかに英米で音質が違います

これほどまで音質が異なるにもかかわらず、アメリカ英語の talk を /tɔːk/ で表記するのは無理があると思います。

アメリカ英語の方の発音は明らかにピュアな「オー」でなく「アー」の音が混じってるね!

ひよこ

 

よって、この時に「アー」と「オー」の中間音である /ɒ/ の記号が必要になり、talk や all は /tɒːk/ /ɒːl/ と表記できます。

らいおん

この記事の後半で実際に発音練習してみよう!

 

cot-caught merger とは

上記の発音表記を見て、talk や all が /tɒːk/ や /ɒːl/ になることは理解できても、なぜ talk や all が father の /ɑː/ の母音と同じ /tɑːk/ や /ɑːl/ となるのか疑問に思う人もいるでしょう。これを理解するには cot-caught merger という現象を理解する必要があります。

アメリカ英語では、西海岸の若い世代を中心に cot と caught を /kɑːt/ で全く同じ音で発音する人が多くいます。この現象を cot-caught merger と言い、このように cot と caught を “merge” させ、区別しない話者は talk や all の母音に father の /ɑː/ の母音と同じ音をあて /tɑːk//ɑːl/ と発音します。

詳しくは以下の記事もご覧ください。

参考 cot-caught mergerWikipedia

 

cot-caught merger の発音マップ

Harvard Dialect Survey では、約40%のアメリカ人が cot と caught を同じ音で発音したと報告されています。以下がその分布マップです。

らいおん

「cot と caught の発音は違う」と答えた人は特に東海岸に多いね!
あわせて読みたい
Harvard Dialect Survey については以下の記事もぜひ参考にしてください。 Harvard Dialect Survey でアメリカ英語発音の地域差を深堀り

初級英語音声学 P.84では /ɒː/と/ɑː/が同じに発音される地域について以下のようなマップを紹介しています。

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さらに、/ɒː/と/ɑː/が同じに発音になるのは特に西海岸の若い世代で顕著だとされていますが、英語音声学入門では以下のマップを紹介しています。

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かなり複雑なのですぐに理解できなくても大丈夫だよ!以下では発音練習をしてみよう!

ひよこ

 

/ɑː/ の発音

/ɑː/ の発音

pot, god, father, Chicago, Tom

発音ポイント
  • 英語の母音の中で最も口の開きが大きく舌の位置が低い音です。
  • 下顎(あご)を下げ、日本語の「アー」よりも口を大きく開け、喉に近いところで「アー」(「ア」)と発音します。
  • 唇を丸めず、口を縦に大きく開けて発音しましょう。

 

なお、ɑ は非円唇・後舌母音で、ɒ は円唇・後舌母音です。

らいおん

ɑ は唇の丸めがなくて、ɒ は少し唇の丸めがあるということだね!
注意

father, calm, palm などを  /ɑː/ とし、box, not, top を /ɑ/ として区別している辞書もありますが、本ページでは全て /ɑː/ で統一します。

NOTE
ɑ の記号は script a(筆記体の a )と呼ばれます。

 

/ɑː/ の発音を含む語

  • pot
  • god

/ɑː/ のみ発音

  • /ɑː/

 

/ɒː/ の発音

/ɒː/ の発音

talk, all, saw, autumn, law

発音ポイント
  • 「アー」と「オー」の中間の音を出すイメージで、日本語の「オー」よりも唇を少し丸め口を縦に大きく開き発音します。
  • 舌は日本語の「オー」よりはかなり低い位置にきます。
  • アメリカの特に西部では若い世代を中心に /ɒː/ の音を /ɑː/ であてる人も多くいます。その場合、cotcaught は全く同じ発音となります。
注意
多くの辞書は /ɒː/ に/ɔː/ の表記を採用しているので注意しましょう。

厳密に言うと /ɒː/ は /ɔː/ よりも若干舌の位置が低いです。以下の単語は、アメリカ英語では舌がかなり低く、ア寄りに聞こえます。

NOTE
ɒ の記号は turned script a(逆さの筆記体の a )と呼ばれます。

 

/ɒː/ の発音を含む語

  • talk
  • all

/ɒː/ のみ発音

  • /ɒː/

 

 

アメリカ英語の母音解説

あわせて読みたい
アメリカ英語の全母音は以下の記事で解説していますのでぜひ参考にしてください。 lasting influence【アメリカ英語の全母音】発音&発音記号の解説

 

あわせて読みたい
/ɑ/と/ɒ/の発音の違いについては以下の記事もご覧ください。 英語辞書の発音表記から最近のアメリカ発音を知る:牧野武彦先生のスライド

 

上級:アメリカ英語で /ɑː/ と /ɔː/ の可能性がある語

最後に、以下は /ɑː/ と /ɔː/ の可能性がある語ですが、個人差、地域差が大きく、/ɑː/ が好まれたり /ɔː/ が好まれたりする注意したい語です。

  • borrow
  • sorrow
  • tomorrow
  • orange
  • forest
  • Florida
  • moron
  • Oregon
  • oracle
  • sorority
  • sorry

らいおん

個人的な感覚だと sorry, tomorrow は /ɑː/ 派が多く、orange, forest, Florida, moron, Oregon, oracle, sorority は /ɔː/ 派が多く、borrow, sorrow は個人差が大きく /ɑː/ /ɔː/ 両方な気がするよ!以下の記事も参考にしてね!
どの語も /r/ 音が続いていることが共通しているのも興味深いね!

ひよこ

 

Paul Carley著 American English Phonetics and Pronunciation Practiceの解説

Paul Carley著 American English Phonetics and Pronunciation Practiceでも上記の単語などを以下のように取り上げています。

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らいおん

この本は上級者向けの音声学書籍だけど、子音・母音ともに解説が詳しくておすすめの書籍だよ!