【英語の調音法の同化】manner assimilationとは

らいおん

リスニングなどで on the table が on a table 気味に聞こえることがよくあるんだけど、これは気のせいかな?

あと、was the が was a のように聞こえたり、and then が「アネン」のように聞こえることもあるけどこれは聞き間違えなのかな?

これは実は「調音法の同化」というのが関係してるよ!発音上級者はしっかり整理しておこう!

ひよこ

この記事を書いた人

サラ

英語ジム らいおんとひよこ®代表
・コロンビア大学 大学院卒:英語教授法修士
・ETS (Educational Testing Service) 米国本社の元問題作成者

 

and then が「アネン」のように聞こえる?

リスニングで

  • on the table が on a table のように聞こえる…
  • and then が「アネン」のように聞こえる…
  • will they が will lay のように聞こえる…
  • was the が was a のように聞こえる…

などと感じたことはありませんか?この記事ではこれらのことについて簡単に解説します。

この記事は少し上級者向けですが、参考になることもあると思うのでぜひ最後までご覧ください。

ひよこ

 

調音法の同化とは:manner assimilation

まず全体像から整理しましょう。

/n/ /l/ /s/ /z/ などの後に /ð/ が続くと、/ð/ が先行する音と同じ子音に変化

することがあります。

これを「調音法の同化」= manner assimilation と言います。以下の4つのパターンがあります。

① /n/ + /ð/ → /n/ + /n/

 

例:on the で /ɑːn ðə/ → /ɑːn nə/ に

② /l/ + /ð/ → /l/ + /l/

 

例:will they で /wɪl ðeɪ/ → /wɪl leɪ/ に

③ /s/ + /ð/ → /s/ + /s/

 

例:that’s the で /ðæts ði/ → /ðæts si/ に

④ /z/ + /ð/ → /z/ + /z/

 

例:was the で /wəz ðə/ → /wəz zə/ に

NOTE
この同化は基本的に /ð/ の変化に限られます。

この記事は「イギリス英語音声学(ポール・カーリー, インガ・M・メイス, ビバリー・コリンズ著, 三浦弘訳)」P. 129-130 を参照・引用しながら整理しています。

created by Rinker
¥3,630 (2024/04/24 17:16:56時点 Amazon調べ-詳細)

 

/n/ + /ð/ → /n/ + /n/ の同化の例

では、この同化の例をもう少し詳しく例文で見てみましょう。

以下は Paul Carley and Inger M. Mees著「American English Phonetics and Pronunciation Practice」P. 248の  manner assimilation の例の引用です。

黄色でアンダーラインを引いている箇所に注目してね!

ひよこ

created by Rinker
Routledge
¥7,577 (2024/04/24 17:16:54時点 Amazon調べ-詳細)

 

/ð/ → /n/ の同化の例

It’s on the table.

 

/ɪts ɑn nə ˈteɪbl̩/

And then it rained.

 

n nɛn ɪt ˈreɪnd/

らいおん

文と発音記号表記も全て American English Phonetics and Pronunciation Practice をそのまま引用しています!

 

/ð/ → /l/ の同化の例

Will they manage?

 

/wɪl leɪ ˈmænɪdʒ/

Although it’s sad.

 

lˈloʊ ɪts ˈsæd/

 

/ð/ → /s/ の同化の例

That’s the idea.

 

/ˈðæts si aɪ ˈdiə/

What’s this?

 

/ˈwəts ˈsɪs/

 

/ð/ → /z/ の同化の例

Was the baby healthy?

 

/wəz zə ˈbeɪbi ˈhɛlθi/

How’s that?

 

/ˈhaʊz ˈzæt/

らいおん

ここまでで /ð/ が先行する子音と同じ発音に同化しているのが理解できたね!

 

on the table と on a table は同じ発音ではダメ?

さて、on the table が on a table “のように” 聞こえるのはお分かりいただけたと思いますが、それでは本記事最初の疑問点に戻ると、

on the table と on a table は同じ発音ではダメ?

なのでしょうか?つまり、完全に同じ発音でいいのでしょうか?

このことに関して American English Phonetics and Pronunciation Practice には

Remember to lengthen the assimilated sound, as there’s a clear difference between elision and assimilation of /ð/.

という記述があり、

「同化した音」をしっかり長めに発音する

ことが重要だとあります。

つまり、on the table において、 /ð/ → /n/ という同化が起こるなら、/n/ をしっかりと長めに発音することが重要です。そうしないと、on a table に聞こえてしまう、ということですね。

 

同化した子音を長めに発音することがポイント

このことに関して「イギリス英語音声学(ポール・カーリー, インガ・M・メイス, ビバリー・コリンズ著, 三浦弘訳)」P. 129 には以下の記述もあります。

…さまざまな言語を母語とする学習者が /ð/ を /d/ で発音するので、この調音法の同化を用いることは有効な方策と言えます。

 

また、脱落と /ð/ の同化には、その子音の長さに明確な違い…がありますから、同化した子音を長めに発音することを忘れないでください。そうしないと、on the table… が on a table… と間違えられてしまいます。

発展
今回の記事で紹介したのは調音法の保続同化 = perseverative assimilationといいます。

らいおん

長めに発音することを忘れないようにしよう!

 

「おすすめ発音記事」カテゴリでまだまだたくさん発音に関する知識を紹介しています。

おすすめ発音記事はこちら

 

発音・音声学書籍リスト

僕が読んでいる発音本・音声学書籍紹介は以下の記事にリストにしてまとめていますので興味がある人はぜひご覧ください。

発音本【中・上級者向け100冊】英語の発音向上におすすめの本・音声学書籍レビュー