らいおん
ひよこ
サラ
目次:見たい場所へジャンプ
ask /æsk/ の発音が ax /æks/と発音されるのは間違い?
まず ask という単語を発音して見てください。おそらく、多くの人が
と発音したと思います。しかし、実際にはこの ask の発音が
と発音されているのを聞くこともあります。
黒人英語や一部方言で ax /æks/ の発音も
ax /æks/ の発音は主に黒人英語(African American Vernacular)や一部方言で使われることがあると言われますが、
と見なされることもしばしばだと言えます。しかし、本当にax /æks/ の発音は「非標準」、あるいは「間違い」と言えるのでしょうか?
音位転換 metathesis とは
ax /æks/ の発音を “non-standard” と結論づける前にまず知っておきたい言語現象があります。それは
と呼ばれる現象です。ask → ax はよく metathesis の例と言われることがありますが、metathesis とは
を指します。
らいおん
音位転換 metathesis の例
Wikipedia の Metathesis の記事によると、音位転換の例として、以下のような語を挙げており、右側のように発音されることを挙げています。
- asterisk > asterix /ˈæstərɪks/
- cavalry > calvary /ˈkælvəri/
- foliage > foilage /ˈfɔɪlɪdʒ/[5]
- prescription > perscription /pərˈskrɪpʃən/
- nuclear > nucular /ˈnjuːkjʊlər/ (re-analysed as nuke + -cular suffix in molecular, binocular)
また、英語圏の子供は
こともしばしばあるようで、これもmetathesis の例と言えます。
音位転換 metathesis の日本語の例
音位転換は多くの言語で日常的に見られる現象です。日本語では
- 山茶花: サンザカ → サザンカ
- 秋葉原: アキバハラ → アキハバラ
のようなケースが音位転換の例と言われています。時に、音位転換後の語形が優勢になり、時を経てそのまま定着してしまう場合もあるようです。
音位転換 metathesis の原因は?
音位転換の原因については、Wikipediaでは
- 調音上の要請 – 比較的発音しにくかった音の並びが入れ替わり、より発音しやすい形になるもの
- 民間語源的な例 – 意味の上で関連のある別の語やよく似た語に“ひっぱられ”、結果として音位転換も生じてしまうもの
- 原因のはっきりしないもの
などを挙げています。
歴史的に見れば ax は非標準発音ではない
さて少し脱線しましたが、このように ask → ax は metathesis の例と考えることができます。ただ、ここまで聞いても ax が「レアな非標準発音」と感じるかもしれません。
しかし、面白いことに歴史的に見ると、実は ax の方が標準の発音であった時期があると言われています。
ようなのです。時代の変遷と共に ask が優勢になったものの、現代でも ax の発音を好む人や方言はたくさんあります。Grammaphobia というサイトの “You axed for it!” という記事によると
ようです。
まとめ
実際、会話では ax よりも ask の発音を聞く機会が圧倒的に多いと言えます。しかし、ax の発音も普通に聞くことがあるのと、この記事で説明した歴史的な変遷を考えると ax の発音が間違いであるとは言えないかなと思います。
英語学習者としては ask の発音を推奨しますが、この記事でお話したようなことも知識として知っておくとよいでしょう。
英語の音声を科学する:川越いつえ著
川越いつえ著「英語の音声を科学する」にも以下のような解説があります。
らいおん
ひよこ