僕が読んでいる発音本・音声学書籍:本記事最後からリストへ飛べます
らいおん
ひよこ
サラ
目次:見たい場所へジャンプ
thの発音 /θ// ð/ のコツは?
この記事では、thの発音 /θ// ð/ について解説します。
以下の5冊の書籍の「thの発音解説」を引用・参考にしながら整理し、英語学習者が知っておきたいth発音のポイントやコツについて、細かい点までかなり詳しく解説していきます。
本記事の参考書籍
thの発音 /θ// ð/ のポイント
まずは、結論からいきましょう。th発音 /θ// ð/ のポイントは2つで、①「舌の位置」②「摩擦の度合い」が重要です。
- 舌の位置:前歯の裏に舌先を近づけて発音する。舌先が歯ぐきに触れないように、十分に舌先を前に出す
- 摩擦の度合い:/s/ /z/ と比べて、th音 /θ// ð/ は摩擦がかなり弱い
thの発音:3種類の発音方法
はじめに、松坂ヒロシ著「英語音声学入門」(研究社)P. 78の th の発音の解説がとてもまとまっているので紹介します。
- 声の有無:無声
- 調音位置:歯
- 調音様式:摩擦音
- 舌先を上下の歯のあいだから外にのぞかせ、上の歯の歯先と、舌の上面とを接触させる → 図4
- 上の歯の歯先に舌先を当てる → 図5
- 上の歯の歯うらに舌先をあてる → 図6
thの発音:舌を十分前に出し、上の歯ぐきに触れないようにする
さらに、松坂ヒロシ著「英語音声学入門」には以下のような説明があります。
以上3つのしかたのうち、日本人学習者がもっとも確実に [θ] を発音することができるしかたは①(図4)である。
なぜなら、日本人学習者の典型的な誤りは、舌を十分前に出さないことだからである。
このために、舌が上の歯に触れる代わりに上の歯ぐきに触れてしまい、[θ] の代わりに [s] が出てしまうのである。①のしかたを選ぶことにより、この誤りをする可能性からもっとも遠ざかることができる。
thから他の音に移ったりする時の発音のコツ
しかし、英語の母語話者は、②もよく使う。②の場合のほうが、①の場合よりも、舌の口がなかに入っているから、他の音から [θ] へ移ったり、[θ] から他の音に移ったりするのにつごうがよい。
③はこの点でさらに好都合である。③は [s] と紙一重であるので、初学者にはむずかしいが、③のしかたによっても [θ] は発音することができる。
…[θ] の発音に自信がなかったら、①のしかたを選びなさい。
必要があれば、図7(以下の図)にあるように、くちびるに指や箸を当てて、その指や箸を舌先でなめて練習しなさい。
発音の能力が高まるにつれ、自然に②のしかたで [θ] が言えるようになるはずである。自信のある人は、はじめから②で練習してもよい。
[ð] の発音のコツ
さて、thの有声音は [ð] です。[ð] は this [ðɪs], that [ðæt], these [ðiːz] などに使われます。
- 声の有無:有声
- 調音位置:歯
- 調音様式:摩擦音
[ð] は声の有無という点をのぞけば、[θ] と変わるところはないため、上記 [θ] と発音のポイントは同じです。
/θ/と/ð/の発音:摩擦を/s/ /z/より弱く
次に、「摩擦」の度合いという観点で thの発音を見てみましょう。竹林滋・清水あつ子・斎藤弘子著「英語音声学入門」(大修館書店)P. 94, 95の解説を紹介します。
…舌先が上の前歯の裏側に軽く触れ、そのすき間から呼気が押し出されて調音される。その間声帯は振動しない。
摩擦の音は /s/ よりかなり弱い。
…摩擦の音は /z/ よりかなり弱い。
つまり、
/θ/と/ð/の発音は、摩擦が /s/ /z/より弱い
というのがポイントです。
あまり摩擦が強くならない程度に、軽く舌を歯にあてる感じで発音
するとよいでしょう。
ひよこ
らいおん
thの発音:/s/や/z/よりも舌を前へ出す
また、竹林滋・清水あつ子・斎藤弘子著「英語音声学入門」には、thの発音に関して以下の補足もあります。
…日本人は「サ行」の子音 /s/ を代用し、thigh と sigh, thick と sick, path と pass などにおいて /ð/ と /s/ の区別に困難を感じることが多い。
初期の発音指導でしばしば舌の先を上下の歯の間から前へ出すように指導することがあるが、これはややオーバーではあるが /s/ よりも舌を前へ出せという意味ではそれなりの効果がある。
thの発音の練習①:/sːːːːːːːːːːːː/ → /θːːːːːːːːːːːː/ へ
次に、thの発音のコツとして、神山孝夫著「新装版 脱・日本語なまりー英語(+α)実践音声学」(大阪大学出版会)P. 78の解説も参考になるので紹介します。
…まずはサスセソの子音 /s/ を長く引き伸ばして発音してください。
/sːːːːːːːːːːːː/
このとき上下の歯はピッタリくっついています。鏡で口を見ながら、…今度は途中から数ミリだけ下あごを下げてください。つまり上下の前歯の間を数ミリ開けるんです。すると、上下の歯の間が開いた途端に弱々しい音に変化しますよ。
/sːːːːːːːːːːːː/ → /θːːːːːːːːːːːː/
つまり、歯を食いしばって /s/ を発音しながら、ちょっと上下の歯の間隔をとると舌の位置が変わって /θ/ になるのです。
thの発音の練習②
次に、靜 哲人著「日本語ネイティブが苦手な英語の音とリズムの聞き方がいちばんよくわかるリスニングの教科書」P. 68, 70の thの発音の仕方と練習も紹介します。
ここまで紹介した解説と合わせると理解が深まるでしょう。
- 舌先を上の前歯にしっかりつけて息の通り道をふさぎます。鏡で見て舌先が見えるように。
- 舌と歯の間から無理に息を出します。あまり音は聞こえないのが正解。(=摩擦は弱く)
- 次に母音を発音するときに舌先が歯から離れます。
口慣らしとして、th の後に母音を言ってみましょう。
- thア
- thイ
- thウ
- thエ
- thオ
次に、母音の後に th を言ってみましょう。
- アth
- イth
- ウth
- エth
- オth
濁るth /ð/ の発音の仕方
- 濁るth /ð/ の口の形と動きは濁らないth /θ/ 発音の仕方と同一です。
- 舌先を上の前歯につけ、呼気の出口をふさぎます。
- 舌と歯の隙間から無理に「声」を「ウ〜」と出してください。それが濁った th です。
らいおん
/θ/ vs /s/ の発音の区別
さて、ここまでを理解したら、自分が発音する時も、あるいはリスニングにおいて、thinks vs sink のような /θ/ vs /s/ の発音の区別でができるようになることも重要です。
これに関して、牧野武彦著「日本人のための英語音声学レッスン」P. 65に、
摩擦が /s/ の方が鋭いという点を利用して区別する
とあるように、「摩擦の度合い」で区別するとうまくいきます。
ひよこ
/ð/ vs /z/ の発音
breathe vs breeze のような /ð/ vs /z/ の発音の区別も同様です。
摩擦が /z/ の方が鋭いという点を利用して区別する
のがポイントです。
/θ/の記号の名称:theta (シータ)
最後に、/θ/の記号ですが、
theta /ˈθeɪtə/ /ˈθiːtə/(シータ)
と言います。
/ð/の記号の名称:edh (エズ)
一方、/ð/ の記号ですが、
edh /eð/(エズ)
と言います。
thの発音のまとめ
お疲れ様でした!最後にもう1度ポイントを以下に整理しておきます。
- 舌の位置:前歯の裏に舌先を近づけて発音する。舌先が歯ぐきに触れないように、十分に舌先を前に出す
- 摩擦の度合い:/s/ /z/ と比べて、th音 /θ// ð/ は摩擦がかなり弱い
らいおん
「おすすめ発音記事」カテゴリでまだまだたくさん発音に関する知識を紹介しています。
発音・音声学書籍リスト
僕が読んでいる発音本・音声学書籍は以下の記事にリストにしてまとめていますので興味がある人はぜひご覧ください。
らいおん