母音弱化の傾向とweak vowel mergerについて

参考にしている発音本・音声学書籍たち:本記事最後からリストへ飛べます

この記事を書いた人

サラ

英語ジム らいおんとひよこ®代表
・コロンビア大学 大学院卒:英語教授法修士
・ETS (Educational Testing Service) 米国本社の元問題作成者

 

weak vowel mergerとは

この記事は自分の備忘録も兼ねた上級者向けの記事です。weak vowel merger についての文献の記述などを少しメモしておきます。

Geoff Lindsey著 『English After RP』P. 39では以下の記述があり、

RP made extensive use of the KIT vowel /ɪ/ and the FOOT vowel /ʊ/ in weak syllables before consonants. There’s an increasing tendency to replace these with schwa. This is known as weak vowel merger, and is well established in American English.

として、アメリカでは定着している weak vowel merger が現代の標準的なイギリス英語SSB(Standard Southern British pronunciation)でもかなり広まっているということが分かります。


weak vowel merger を初めて聞くという方はここでは簡単に言えば、

アクセントのない音節にある弱母音 /ɪ/ や /ʊ/ が シュワー /ə/ で発音されること

くらいに考えてください。

例えば、kilometers という語の第1音節に注目すると、

/kɪlɑ́ːmətɚ/

のように発音もできますが、最近はシュワー /ə/ で

/kəlɑ́ːmətɚ/

のように発音されることが多い、といった感じです。

 

現代の標準イギリス英語での weak vowel merger

なお、『English After RP』ではさらに以下の記述もあります。

In SSB, weak vowel merger is more advanced with words which had weak /ʊ/ in RP, often preceded by /j/. Examples include ambulance, articulate, education, particular, population, stimulate. In all such words, schwa is now common and recommendable to the learner, e.g. particular pə’tɪkjələ.

 

In the case of RP’s weak /ɪ/, many words are now widely heard with /ə/ instead, e.g. the second vowels of foreign and arbitrary. But there are many words which firmly retain /ɪ/ for most SSB speakers. A well-known word pair is Lenin and Lennon, which are typically merged in America but still distinct in SSB: Lenin has /ɪ/ and Lennon has /ə/.

あわせて読みたい
イギリス英語発音派の人は Geoff Lindsey著 English After RP:Standard British Pronunciation Today をぜひチェックしてみましょう。

 

Englsih Afer RP は現代の標準イギリス英語を学ぶ上で、必見の1冊です。また、アメリカ英語派の人も発音上級者なら気づきがたくさんあるのでぜひ読んでみましょう。【イギリス英語発音派必見】Geoff Lindsey著 English After RP:Standard British Pronunciation Today

 

kilometerの第1音節の発音

ところで、先ほど触れた kilometer の発音を辞書で引くと、ジーニアス英和辞典第6版では

/kəlɑ́ːmətər, kɪ́ləmìːtər | kɪlɒ́mɪtə, kɪ́ləᴜmìːtə/

という表記になっています。

アメリカ英語ではメイン発音で母音はシュワー /ə/ で  /kə/(=つまり weak vowel merger)、イギリス英語では /kɪ/ になっています。

created by Rinker
大修館書店
¥3,960 (2024/11/21 05:22:48時点 Amazon調べ-詳細)

 

/k, ɡ, ŋ/ などの軟口蓋音や /tʃ, dʒ, ʃ, ʒ/ などの口蓋歯茎音の前のKIT母音

次に、Paul Carley and Inger M. Mees著『American English Phonetics and Pronunciation Practice』P. 202には、

The status of KIT as a weak vowel is at present variable because for many people it is being supplanted by schwa. For those speakers who still distinguish KIT from schwa in unstressed syllables, KIT can occur before velar and palato-alveolar consonants and in certain suffixes:

という興味深い記述もあります。

たしかに、 “before velar and palato-alveolar consonants” のところはその通りだと感じます。

以下のように、

  • public
  • exam
  • expect
  • punish
  • damage
  • artist
  • native

などの語は特にそう感じます。

created by Rinker
Routledge
¥7,725 (2024/11/21 17:45:58時点 Amazon調べ-詳細)

 

現代英語における母音弱化の傾向

最後に、以下の竹林滋『現代英語における母音弱化の傾向』も非常に勉強になりました。

例えば、以下のP30の記述などは参考になります。

参考 現代英語における母音弱化の傾向竹林滋

また、本記事とは関係ありませんが、P.1やP. 21の以下の分類や記述なども個人的には参考になりました。

 

 

「おすすめ発音記事」カテゴリでまだまだたくさん発音に関する知識を紹介しています。

おすすめ発音記事はこちら

 

発音・音声学書籍リスト

僕が読んでいる発音本・音声学書籍は以下の記事にリストにしてまとめていますので興味がある人はぜひご覧ください。

らいおん

数が多いので少しページが開くのに時間がかかる場合もありますが、開きます!
発音本【中・上級者向け102冊】英語の発音向上におすすめの本・音声学書籍レビュー