【日本語「ラ行」子音】flap/tap tの発音:弾音・たたき音・はじき音とは?

僕が読んでいる発音本・音声学書籍:本記事最後からリストへ飛べます

 

らいおん

water や better の t日本語「ラ行子音」との関係について解説するよ!
特にアメリカ英語発音派の人は要チェックだよ!

ひよこ

この記事を書いた人

サラ

英語ジム らいおんとひよこ®代表
・コロンビア大学 大学院卒:英語教授法修士
・ETS (Educational Testing Service) 米国本社の元問題作成者

 

water, betterの t は「ラ行音」?

英語学習者なら、water は「ワーラ」better は「ベラ」のように発音すればOKということを誰もが1度は聞いたことがあると思います。つまり、

日本語の「ラ行子音」で発音すればよい

という考え方です。

しかし、water や better の t は「日本語のラ行子音と “全く同じ” 音」なのでしょうか?この記事ではこのことに関して簡単に考えてみたいと思います。

 

弾音・tap・flap tとは

まず、このような t の音に関して少し整理しましょう。water や better の t が日本語のラ行子音のように聞こえるのは特にアメリカ英語で顕著な音声現象で、このような t は発音の本などを見ると

  • たたき音
  • はじき音
  • tap
  • flap
  • 弾音
  • 単顫動音(たんせんどうおん)

などと呼ばれます。この記事では便宜上日本語では「弾音」で統一します。後ほどお話しますが「弾音」は

[ɾ] 

という記号で表します。

よく見ると分かるけど [ɾ] は [r] の記号とは違うので注意しよう!

ひよこ

 

有声の t と呼ばれることも

ちなみに、このような弾音の t は「有声の t」と呼ばれることもあります。t の有声音は d ですが、まさに d 音のようになり、

  • water → wader
  • better → bedder

のようになります。しかし、実際は通常の d というより

速い d 音

のような感じで発音されるとイメージした方が英語学習者としては上手く発音できると思います。よって、

「d 音になる」でなく、「速い d 音」になる

と覚えておくとよいでしょう。

僕は生徒さんに教える時は flap t という語を好んで使用していますが、自分が代表をつとめているオンライン英語スクールらいひよ®のレッスンでは

flap t = quick d

で考えましょうと生徒さんに伝えています!

サラ

注意
ただし、弾音になる箇所全てで「速い d 音」であてればいいというわけではありません。例えば、wintercenter など鼻音化した弾音が生じる場合は「速い d 音」で発音すればいいと一概に言えない場合もあります。(弾音が完全に消えることもしばしばです)

 

有声の t の記号は [t̬]

ちなみに有声の t の記号は

[t̬]

です。water や better などでこの記号を採用している辞書もあるので覚えておくとよいでしょう。

 

waterなどの弾音 = “ほぼ”日本語のラ行音?

さて、少し話がずれましたが、water や better などの t の「弾音=日本語のラ行子音でいいか?」という話に戻しましょう。これに関してですが、

松坂ヒロシ著「英語音声学入門」(研究社)P. 131では、

英語の歯茎弾音 [ɾ] と日本語のラ行子音 [r] は調音位置が違う

ということを指摘しています。

created by Rinker
¥2,750 (2024/12/21 18:09:23時点 Amazon調べ-詳細)

 

日本語のラ行子音 [r] の方が、英語の歯茎弾音 [ɾ] も舌の位置が後ろ寄り

松坂先生の英語音声学入門では、

英語の [ɾ] はあくまでも歯ぐきの音である。日本語のラ行子音の調音位置は後ろだから、これを前にずらさないと [ɾ] にならない

と説明されています。つまり、

日本語のラ行子音 [r] は、英語の歯茎弾音 [ɾ] よりも舌が後ろ寄りで発音されている

ということです。

ただし、このことが難しいと感じた人は「ほぼ同じ」という理解でまずはOKだよ!

ひよこ

らいおん

上級者はこのように調音位置が違うことを知っておこう!

 

日本語のラ行子音は複数のバリエーションがある

また、このことに加えて本記事では

弾音 = “ほぼ” 日本語のラ行子音という理解でよいが、日本語の“ラ行子音はあらわれる位置によって音が若干変わる 

ということについても整理したいと思います。

日本語のラ行音と “全く” 同じでなく、“ほぼ” 日本語のラ行音になると解釈した方がよいのは、実は

弾音は特に母音間のラ行子音にあらわれる 

と言われているからです。

どういうことか、次のセクションの例を見てみましょう。

 

「歯茎弾音」「歯茎たたき音(tap)」「歯茎はじき音(flap)」: [ɾ]

  • あげ
  • んとう
  • シウム
  • リー

と発音してみてください。

これらの下線部は舌先が歯茎の少し後ろあたりを素早くたたいています。これを「歯茎弾音」「歯茎たたき音(tap)」「歯茎はじき音(flap)」なと呼び、記号は [ɾ] で表します。

で表記します。ちなみに、これは立派なR音の一種です。ポイントなのがこれらの

[ɾ] は主に母音間のラ行子音に用いられる

ということです。

らいおん

上記の例は全て母音の間にラ行音があるね!

 

ラ行子音はそり舌音 [ɖ] などの時もある

上記はラ行子音が母音に挟まれている例でしたが以下の語も見てください。

  • ーメン
  • んご
  • タス

これらの語は [ɾ] と微妙に異なって発音されることもあります。実は

語頭のラ行子音は「そり舌音」と呼ばれる [ɖ] で発音されることもしばしばある

と言われています。 [ɖ] は [ɾ] より舌先が少しだけ反り返っている感じがする音です。

 

話者によって発音の仕方が異なり、 [ɖ] で発音されていたり [ɾ] で発音されていたり、または別の音で発音されることもあるようですが、語頭では [ɖ] で発音されていることも多いようです。

繰り返しますが、このように「ラ行子音」と言っても、どこにあらわれているかや話者の発音の仕方によって複数のバリエーションがあるのです。

語中ではやはり [ɾ] の発音が多いようだよ!

ひよこ

 

「ン」の後のラ行子音は [l] で発音される?

また、以下の例もご覧ください。

  • かんんしゃ(観覧車)
  • かんい(慣例)

実は「ン」の後のラ行子音は [l] で発音されることもあると言われています。これも絶対でなく、そういう人もいる、ということですがおもしろいですね。自分で声に出して、どんなラ行子音になっているかを検証してみましょう。

らいおん

詳しくは「脱・日本語なまりー英語(+α)実践音声学」や「日本人のための英語音声学レッスン」などもご覧ください。
created by Rinker
大阪大学出版会
¥2,420 (2024/12/21 23:17:22時点 Amazon調べ-詳細)
created by Rinker
¥2,530 (2024/12/21 17:24:37時点 Amazon調べ-詳細)

 

たたき音(tap)とはじき音(flap)の違いは?

最後に、たたき音とはじき音の違いについてです。Wikipediaの「フラッピング」の記事が参考になります。以下のように説明されています。

「たたき音(tap)」と「はじき音(flap)」で舌の動かし方が異なる。

  • たたき音(tap

舌の上下運動によって発音される。

  • はじき音(flap

舌を後ろから硬口蓋あたりに当てて発音する。

 

加えて、たたき音(tap)やはじき音(flap)の発音の仕方とは異なる弾音も存在する。例えば、better/betər/の/t/の音は、後ろに/r/の音がある関係で、はじき音の舌の動きとは逆になり、舌を前から硬口蓋あたりに当てて、後ろに送らせて発音する。

ただし、正直区別はかなり難しいので、一般の英語学習者としてはまずは “ほとんど同じ” と考えて差し支えはないと個人的に思います。

また、興味がある方は JC Wells著のAccents Of English Vol 1などもぜひご覧ください。

created by Rinker
Cambridge University Press
¥12,561 (2024/12/21 03:44:02時点 Amazon調べ-詳細)
僕ももう少し勉強して知識をつけたらまたこの部分を加筆したいと思います!

サラ

 

flap t の発音

あわせて読みたい
弾音の t (以下記事と動画では flap t と読んでいます)はアメリカ英語の最も顕著な特徴の1つです。僕がアルクのEnglish Journal Onlineに寄稿した以下の記事で詳しく解説していますのでぜひ参考にしてください。
参考 city, interview, buttonの「t」はすべて発音が違う?6種類の「t」を発音し分けよう!Part 2English Journal Online

 

flap t の発音解説

また、以下のYouTube動画でも詳しく解説しています。

 

「おすすめ発音記事」カテゴリでまだまだたくさん発音に関する知識を紹介しています。

おすすめ発音記事はこちら

 

発音・音声学書籍リスト

僕が読んでいる発音本・音声学書籍は以下の記事にリストにしてまとめていますので興味がある人はぜひご覧ください。

らいおん

数が多いので少しページが開くのに時間がかかる場合もありますが、開きます!
発音本【中・上級者向け102冊】英語の発音向上におすすめの本・音声学書籍レビュー