サラ
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部分下降調について
この記事では、英語のイントネーションでの「部分下降調」と呼ばれるタイプのトーン(音調)について紹介します。全ての音声でピッチ変化を可視化していますので参考にしてください。
部分下降調はどんなトーンなのか?
渡辺和幸著『英語イントネーション論』(研究社)や『英語のリズム・イントネーションの指導』(大修館書店)には「部分下降調」という用語が登場します。
しかし、この2冊にはCDなどの音源がないため「部分下降調」がどんなトーンなのかを理解することが非常に難しいと言えます。
サラ
部分下降調の例
以下が僕が「部分下降調」と思う例です。
physics の部分下降調(と思われる例)
VOAより
らいおん
ひよこ
部分下降調はアメリカ英語では必須の音調?
まず部分下降調について、『英語のリズム・イントネーションの指導』(大修館書店)P. 134の記述を見てみましょう。
部分下降調はイギリス英語では問題にされるほど用いられないが、アメリカ英語においては下降上昇調と並んで非常によく聞かれる。<米>の音調上の特徴と言ってよい。
この音調が聞かれる場所はなんと言っても非文末位置であり、「未完」「継続」を表す。
*太字やハイライトを加えています。
とあり、「非文末位置」でよく使われると説明されています。また、「文末」での部分下降調については以下の記述があります。
文末におけるこの音調は<米>では中・高の教科書にもよく出てくる日常慣用表現、たとえば、別れの挨拶(So long, Good night)、呼びかけ語、感謝の言葉の返答(You’re welcome)、軽い謝罪(Sorry)などでも比較的ひんぱんに用いられるので、アメリカ英語の習得には必須の音調である。
*太字やハイライトを加えています。
部分下降調は平坦調の仲間?下降調の仲間?
次に、渡辺和幸著『英語イントネーション論』(研究社)P. 151の「部分下降調」についての記述を紹介します。
この音調は核音節の直後に尾部が続いていれば、平坦調の一種とも解釈されるような音調である。しかし、実際には尾部がないことも多い上に、たいていの場合、核音節そのものが下降の形を取るので、下降調の一種と考える方が便利であろう。
もちろん、下降が声域の底部まで届かないので、なんとなく宙ぶらりんの印象を与えることもある。
*太字やハイライトを加えています。
また、以下の記述もあります。
<英>では、この部分下降調に相当するピッチ変化は核でない強勢音節としては相当ひんぱんに聞かれるが、核音節ではまれである(渡辺 1980: 185-208).
<米>では普通(Trager-Smith方式で) /32/ と表記されているピッチ変化で非文末位置での核としてはこの音調はかなり用いられている。文末核としても<英>よりもかなり多い。
*太字やハイライトを加えています。
部分下降調の意味
次に、『英語イントネーション論』P. 152の「部分下降調」の意味などについての記述を紹介します。(英文も載っていますが割愛します)
…「未完・継続」の意味が明白である。また場合によっては文末核として、次のように「ためらい」の意味が含まれていることもある。….
*太字やハイライトを加えています。
また、陳述文とか命令文を和らげる働きもあるので、この音調は命令文をいっそうていねいな「依頼」に変えることもある。
文末核でも「未完」の印象を持つことが多く、疑問を投げかけた直後自分で答を提示するような形式の中で用いられることもあるし、単独で用いられることもある。…
部分下降調の音調記号
部分下降調の音調記号としては、『英語イントネーション論』P. 30では以下の saying の「➘」+「→」ような記号が与えられています。
部分下降調:What was I saying? の行間表記
下降調、上昇調、下降上昇調、平坦調+部分下降調
では以下で部分下降調(と僕が思う)の例を他にも紹介します。
以下は da という無意味語を5つの異なるトーンで読み分けたものです。まず、
下降調 ➘
上昇調 ➚
下降上昇調 ➘➚
平坦調 →
の基本4トーンで読み、その後5番目に僕が「部分下降調」と”思うもの”で読んだものです。5番目のピッチ変化に注目して聞いてみて下さい。
da:下降調、上昇調、下降上昇調、平坦調+部分下降調
tennis の部分下降調の例
次も「部分下降調」と思う例です。
tennis の部分下降調(と思われる例)
VOAより
Lo and behold の部分下降調の例
次も「部分下降調」と思う例です。
behold の部分下降調(と思われる例)
NBC Nightly News with Lester Holt(2022年6月14日19:50あたり)より
Newshour の部分下降調の例
次も「部分下降調」と思う例です。以下の Newshour がそれに聞こえます。
Newshour の部分下降調(と思われる例)
PBS NewsHour(2022年4月20日のフルエピソード)より
Praatでイントネーションを可視化
この記事は Praat というソフトを使ってピッチ変化を可視化しています。ぜひイントネーション学習の参考にしてください。
英語のイントネーション学習の全体像
イントネーションのより詳しい解説は今後YouTubeや本サイトの記事で補足していきますが、以下のYouTube動画でイントネーション学習全体像を動画解説したのでこちらもぜひご覧ください。学習者がイントネーションに関して何を知っておけばよいかを概観しています。
様々な英語のイントネーションを可視化

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