僕が読んでいる発音本・音声学書籍:本記事最後からリストへ飛べます
らいおん
Lの発音の仕方やコツを解説するだけでなく、Lの舌の位置やマメ知識まで、英語学習者が知っておきたいことのほぼ全てを網羅している記事になっているよ!
その中から分かりやすいLの発音解説を引用・紹介もするよ!
ひよこ
サラ
この記事はLの発音について、音声学に基づいて英語学習者が知っておきたいこと網羅的にカバーしています。少し長い記事ですがじっくり読み進めればきっとLの発音についての理解が深まるはずです。
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英語のLの発音の特徴
まずは、英語のLの発音の特徴としておさえておきたい全体像を整理します。以下がLのポイントです。
- Lの発音の基本練習:舌先を上の前歯の後ろの歯ぐきに押し当てたまま「ウーーー」または「オーーー」と声を出す。舌の裏側を相手に見せるくらいで
- Lは舌の横=舌の両脇(側面)から息が抜け出る音
- 舌先は上の前歯の後ろの歯ぐきにしっかりと強めに押しあて、舌先は”素早く”離さないで、“ゆっくり”離す
- Lは単語の中のどの位置に来るかによって発音の仕方と音色が若干変わってくる
- 「暗いL=dark l」と「明るいL=clear l」の2種類があるが、アメリカ英語ではほとんどの場合暗めで、「ちょっと暗いL」~「暗いL」で発音される
- 「母音の前のL」」は比較的明るい感じの音色だが、アメリカ英語ではやはり暗めな音色
- 「語尾のL」「子音の前のL」は特に暗い感じがして、「オ」のような音色になる
ひよこ
それでは以下で詳しく特徴を見ていきましょう。
英語のLの発音の定義:舌の横から空気が抜け出る側音
らいおん
Lは舌先を上の歯ぐきにつけたまま息を出し、その息が舌の両側から抜けて出る音です。舌の両側=側面から息が出ていくので「側音」と呼ばれます。
また、Lの調音位置は「歯ぐき」です。よって、
と呼ばれます。
この名称を覚える必要は必ずしもありませんが、「呼気が舌の両側から抜けて出る音」というイメージを持つことはLの発音の攻略において非常に重要です。
ひよこ
らいおん
Lの発音の仕方・基本練習のコツ
以下がLの発音の仕方の基礎です。Lの発音を練習する時は、とにもかくにも以下の練習方法から始めましょう。
- 上の歯と下の歯が両方見えるように歯をむき出しにする
- 上下の歯の間を少し開ける
- 上の前歯の後ろに舌先をベタッとくっつける
- 舌先を上の前歯の後ろの歯ぐきに押し当てたまま「ウーーー」または「オーーー」と声を出す。これでLの完成
- ここまでできるようになったら la li lu le lo で練習(後ほど解説)
Lの基本練習は、上記ステップ4の
が最も重要です。
らいおん
Lの発音:舌の位置と形は?
さてここでLの舌の位置について整理しましょう。前述の通りLの舌の位置は「上の歯ぐき」です。以下の図を参考にしてみてください。
(図の点線は空気の流れです。繰り返しますが、舌の横から空気が流れ出るのがLです。)
Lは舌の裏側を相手に見せるくらいで発音する
舌先を歯ぐきにしっかり押し当てるのを意識したら、
してみましょう。きれいなLが出るはずです。鏡をみて、自分の舌を確認してみましょう。
英語の歯茎音:/t, d, s, z, n, l/
ちなみに、調音位置が「上の歯ぐき」である音を「歯茎音(しけいおん)」と呼びますが、
です。これらは同じ場所で発音される仲間なのでまとめて覚えておくのがおすすめです。
la li lu le lo でLの練習
ここまでできるようになったらLで「ラリルレロ」を言いましょう。つまり、 la li lu le lo と連続で発音してLの練習をします。
ポイントは以下の5つです。
- 舌先は”素早く”離さないで、“ゆっくり”離し、日本語の「ラリルレロ」を言う時よりも歯ぐきに舌先がついている時間を長くする
- ギリギリまで舌先を離さないで次の母音を発音するイメージでLを少し長めに発音するのがコツ:例:la というより llla のイメージで
- 舌の押し付けが弱く、歯ぐきから舌をすぐに離してしまう人も多い。しっかりと押し付ける
- 舌の両脇から息が流れ出ていくのを意識
舌先を”ゆっくり”離し、日本語の「ラリルレロ」よりも歯ぐきに舌先がついている時間を長くするのが最大のポイントです。la li lu le lo というより、最初は
- llla
- llli
- lllu
- llle
- lllo
のようなイメージで発音してみましょう。
Lの発音を単語で練習
ではLを単語レベルで練習しましょう。舌先を”ゆっくり”離し、歯ぐきに舌先がついている時間を長くするイメージこで以下の語を発音してみましょう。
light lake, last, let
ひよこ
Lの「舌の両脇から呼気が流れ出る」という感覚を掴むコツ・練習
ところで、「舌の両脇から呼気が流れ出る」という感覚がいまいちピンとこない人も多いでしょう。これは、以下の方法を実践するのが効果的です。
舌先を歯ぐきにつけたままの状態で、相手に自分の舌の裏側を見せるようにして、空気を強く吸い続けてみる。
すると、ほっぺたの内側=舌の両脇が涼しく感じるはずです。それが舌の両脇の隙間から呼気が出せているという証拠です。
ここからがLの発音の“後半戦”です。
ひよこ
Lは単語の中の位置によって発音・音色が若干変わる
前述しましたが英語のLは実は
という性質があります。このことについてここから詳しく解説していきます。
「暗いL=dark l」と「明るいL=clear l」
英語のLは大きく分けて2種類あり、
があります。特に「ダークL」は、この用語を一度は聞いたことがある学習者も多いでしょう。
この区別自体はいいのですが、注意したいのが、実際は「暗いL」と「明るいL」の”中間”のようなLも使われ、「Lの音色にはかなり幅がある」ということです。
特に、
されるとも言われます。
このため、本サイトでは
アメリカ英語派の人は「明るいL」という用語についてそれほど気にしなくても大丈夫
という立場を取ります。(松坂ヒロシ著「英語音声学入門」第13章も参照ください)
Lを「明るい」「中立」「暗い」の3種類に分類することもありますが、本記事では以下のように「母音の前のL」と「暗いL」という分類を採用します。
- 「暗いL」は [ ɫ ] という音声記号を使って表されます。
- イギリス英語では「明るいL」と「暗いL」を基本的に区別します。
らいおん
「母音の前のL」と「暗いL」
ここまでを踏まえ、アメリカ英語のLについて本サイトでは以下のように整理したいと思います。
- 「母音の前のL」:「語尾のL」や「子音の前のL」と比べると明るい感じの音色
- 「暗いL」:「語尾のL」か「子音の前のL」で、特に暗い感じがして、「オ」のような音色になる
「母音の前のL」
「母音の前のL」を含む語の練習です。ここで本記事前半で練習した単語を使ってもう一度発音してみましょう。舌先を”ゆっくり”離し、歯ぐきに舌先がついている時間を長くすることに注意しましょう。
「語尾のL」や「子音の前のL」と比べると明るい感じの音色です。
light lake, last, let
「語尾のL」「子音の前のL」:「暗いL」
次に後ろに母音が来ない「暗いL」です。この時のLは
になります。
また、少し発展的なことですが、覚えておいてほしいことが1つあります。この「暗いL」はここまで見てきたLと少し違い、
という特徴があります。
以下の3ステップでこの「暗いL」を発音してみましょう。
「暗いL」の発音コツ
- 「暗いL」=「ォl」とイメージする
- 「ォ」を発音したら舌先を歯茎に近づける
- 発展:舌先が歯茎に軽く触れるか触れないかくらいまで近づければ「暗いL」にもなる
繰り返しますが、3は少し発展的なことなので、まずは舌先を歯ぐきにつけるようにして発音しましょう。
らいおん
では、「暗いL」を含む以下の語を練習してみましょう。発音のイメージがしやすいように右側にカタカナのヒントを表示します。
- bubble:バボl
- pencil:ペンソl
- bell:ベォl
- feel :フィーォl
- pool:プーォl
- oil:オィォl
cattle, settle, shuttle, middle, medal, idle
channel, panel, tunnel, signal
people, able, medical, Google
rifle, devil, pencil, puzzle
ひよこ
らいおん
「暗いL」「明るいL」の応用発音知識
Lの基本的な知識が身についている学習者は以下の3つのことも知っておきましょう。
tell のLは「暗いL」ですが、telling のLは母音が続いているので「暗いL」よりは明るく発音されます。
アメリカ英語でも million /ˈmɪljən/ のような「 / j / の前のL」だけは「明るいL」とになるとも言われることもあります。
ただし、繰り返しますが便宜上このような区別をしますが英語学習者としてはそれほど「暗い」という語に引っ張られないようにしましょう。「語末のLと子音の前のLは暗く”オ”っぽい響き」という認識のみで正直十分です。
「/l/の前の母音の変形」という現象が起こることがあります。詳しくは本記事最後の「初級英語音声学」の引用を参照ください。
dull, result では /ʌ/ が [ɔ] に近い音になって聞こえることがある、などはアメリカ英語派の人はおさえておきたい知識です。
Lの発音の理解を深める:Further Reading
さて、ここまででLの発音について理解できたら
も考えてみましょう。
らいおん
まとめ:発音・音声学書籍のLの発音解説
最後に、L音の発音の仕方の「まとめ」として本記事を書くにあたって参考にした発音・音声学書籍6冊のLの発音解説を紹介・引用します。以下の中から自分が最もピンとくる発音方法を参考にして練習してみましょう。
サラ
「日本語ネイティブの苦手な英語の音とリズムの作り方がいちばんよくわかる発音の教科書:靜哲人著」のLの発音解説
まずは靜先生のRの発音解説です。こちらも非常にシンプルで分かりやすいです。
ポイント:l は舌先を長く付ける
- 舌先を歯ぐきにしっかりと押し当てます。力を入れて!
- 舌先はずっと当てたまま「ア〜」と言います。その時点で /l/ の音。舌の両脇を呼気が通るのを意識してください。
- ギリギリまで舌先を離さないで次の母音を発音します。
- / l / は日本語のラ行音とは違います。/ l / では舌の両脇を呼気が通りますが、ラ行音では通りません。また / l / の方が舌先の接触時間がずっと長いです。
/ l / で「ラリルレロ」を言いましょう。/ l / を少し長めに発音するのがコツ。
lllア lllイ lllウ lllエ lllオ
「新装版脱・日本語なまりー英語(+α)実践音声学:神山孝夫著」のLの発音解説
神山先生のLの発音解説です。非常にシンプルで分かりやすいため、本サイト推奨のLの発音の仕方もこの解説を参考にさせていただきました。(以下、一部表現を変えて箇条書きにして紹介しています。)
- 上の歯と下の歯が両方見えるように歯をむき出しにする
- 上下の歯の間を少し開ける
- 上の前歯の後ろに舌先をベタッとくっつける
- そのまま舌先をつけたままで「ウーーー」と声を出す
また、本記事前半でも紹介した以下の説明も神山先生の解説を参考にさせていただきました。
- /l/を発音している舌と同じ状態で、つまり舌先を歯ぐきにつけたままの状態で、空気を強く吸い続けてみてください。するとほっぺたの内側=舌の両脇が涼しく感じるはずです。その舌の両脇の隙間から呼気が出せているという証拠で、これがLが側音と呼ばれる理由です。
「日本人のための英語音声学レッスン:牧野武彦著」のLの発音解説
次は牧野先生の書籍のLの発音解説です。
/l/ は歯茎側面接近音である。舌先を上歯茎につけたままで「オ」もしくは「ウ」といった感じの音を出す。これは軟口蓋音化した [ ɫ ] で、響きの感じから「暗いL」(dark L)と呼ばれる。
軟口蓋音化していない [l] は「明るいL」(clear L)と呼ばれるが、アメリカ発音では /j/ の前を除き用いられない。語末や子音の前ではラ行音と結ぶつくような響きは全くないため、特に舌先を上の歯頚につけなくても差し支えない。
「英語音声学入門:松坂ヒロシ著」のLの発音解説
次は松坂先生のLの発音解説です。この「英語音声学入門」は僕の超お気に入り音声学書籍の1つです。
暗いと呼ばれるのはこのLに「ウ」や「オ」といった後舌母音に似た響きがあるためだが、後舌母音が暗いかどうかは主観的なことであり、科学的な判断とは無縁の話である。
暗いLは次のようにして作る:
- 舌先を歯ぐきにつける。日本人学習者は舌先をつける位置が後ろに寄り過ぎるきらいがあるから舌先を思い切って前に出すように心がけること。歯の裏に舌先が触れてもかまわない。
- 舌先の触れる範囲を小さくすること。一点で触れさせるほどのつもりで発音してかまわない。このためにはアゴを少し開き気味にして、舌先が細くなって上を向くようにするとよい。1と2を実行すれば自然にLに「ウ」や「オ」の響が出るはずである。
ひよこ
「ファンダメンタル音声学:今井邦彦著」のLの発音解説
次は「ファンダメンタル音声学」の解説です。
- 舌先を歯茎部に密着させる。ここまでは [t, d] の閉鎖と同じである。違うのは [t, d] では舌の側面も上の奥歯に密着して完全な閉鎖を作っているのに対し、[ l ]では舌の側面が一方、あるいは両方とも奥歯についておらず、そのため空気は自由に口から出ていく点である。
- 学習者の中には、せっかく一旦は舌先を歯頚部に密着させながら、いざ音を出す段階になると舌を離してしまう人がいる。
- これを防ぐには、舌先を歯茎部に押し当てたまま「ウーーー」と声を出す
- この音を出しながら舌先が歯茎部から離れていないことを確認する
また、「明るいL」「暗いL」については以下の説明があります。
- イギリス英語では[ 明るい l ]と[ 暗い l ]の区別がある。…[ 暗い l ]であることを特に示したい時は [ ɫ ] という記号を使う。…
- 先ほどの舌先を歯ぐきに押し当てたまま「ウーーー」という練習はまさしく [ ɫ ] にほかならない。…
- 今度は、舌先を歯茎部に密着させたまま「イーーー」と言ってほしい。それが明るい [ l ] の音である。
- GAでは[ 明るい l ]と[ 暗い l ]の区別はないと言ってよい。母音や [ j ] の前でも [ ɫ ] に近い音が使われる。
「初級英語音声学:竹林滋、斎藤弘子、清水あつ子著」のLの発音解説
最後は「初級英語音声学」のLの発音解説です。この本はこれから本格的に音声学を学びたい英語学習者に最もおすすめな1冊です。
舌先を歯茎の中央にしっかりつけて「ルー」と発音してみる。次に舌先をそのままの状態に保ち「アイウエオ」と言ってみる。日本語の「ラリルレロ」を言う時よりも歯茎に舌先がついている時間を長くするとよい。
アメリカ英語では多くの話者が全ての位置で多少なりとも「暗いL」[ ɫ ] を用いる。この場合、/iː/ のような前舌母音の前ではそれほど暗くならず、逆に/uː/のような後舌母音の前ではかなり暗くなる。
/l/の前の母音はしばしば変形される。
- mill, childrenのように /ɪ/ の後に /l/ が続く時、/ɪ/ が「イ」と「ウ」の中間の音に聞こえることがある。また、sell, tell,などでは母音 /ɛ/ が「ア」または「オ」に近く聞こえることがある。さらに、dull, result では /ʌ/ が [ɔ] に近い音になって聞こえることがある。その結果 gulf は「ゴlf」のように聞こえる。
- feel, sealのように /iː/ のあとに /l/ が続く時には /iː/ が舌が後ろよりになって両者の間に [ə] のような音が入ることがある。また、sail, file, oil のように /ɪ/ に向かう二重母音 /eɪ/, /aɪ/,/ɔɪ/ の後に /l/ が続く時は、二重母音の後半が低く後ろ寄りになって間に [ə] のような音が入ることがある。
母音の発音解説
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発音解説の参考文献リスト
この記事は以下の発音本・音声学書籍を参考に書いています。以下記事にリストにしてまとめていますので興味がある人はぜひご覧ください。
らいおん