僕が読んでいる発音本・音声学書籍:本記事最後からリストへ飛べます
らいおん
ひよこ
この記事の発音解説では母音を
「前舌母音」「中舌母音」「後舌母音」
「二重母音」「r の二重母音」「r の三重母音」
「弱母音」
の7つのカテゴリに分けて解説していきます。
発音解説は以下の音声学書籍を徹底的に比較し、各母音を発音するのにあたって知っておくべき発音ポイントを、英語学習者目線で重要なもののみ抽出し、かつ簡潔にまとめました。
らいおん
本ページを読めば学習者として最低限知っておきたい各母音の発音ポイントが網羅的に分かるような解説を目指しました。また、なるべく難しい専門的な音声学用語は避けながらも、英語学習者にとって必要と感じる項目は少し専門的であってもしっかり解説していきます。
また、全ての発音に音源をつけ、単語レベルだけでなく音素のみの発音音源も聞けるようにしてあります。
サラ
まずは「前舌母音」「中舌母音」「後舌母音」から見ていきましょう。
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前舌母音 (front vowel)
まずは以下の5つの前舌母音の発音を見ていきます。
- /iː/
- /ɪ/
- /ɛ/
- /e/ ( /eɪ /の第一要素)
- /æ/
らいおん
/iː/ と /ɪ/ の発音の区別
/iː/ の発音
seat, heat, eat, beat, bee
- /iː/ は舌と唇の筋肉が緊張する緊張母音 = tense vowel です。
- 日本語の「イー」にほぼ近い音ですが、唇を横に引くことを意識して発音しましょう。
- /iː/ は英語の母音の中で最も緊張がある音です。
/ɪ/ の発音
sit, hit, it, bit, kid
- /ɪ/ は舌と唇の筋肉に緊張を伴わない弛緩母音(しかん母音) = lax vowel です。
- 日本語の「イ」と「エ」の中間の音色を持ちます。
- 日本語の「イ」ほど明るい音色でなく、曖昧な響きを持ちます。
- 後ほど解説する /ə/ のシュワーの音をマスターした人は、/ə/ を何度か言った後、力を抜き、シュワーを発音するように曖昧に「ィ」と言ってみましょう。
/iː/ と /ɪ/ は長さの違いだけでなく、音質そのものが異なることを意識しましょう。
/iː/ と /ɪ/ を含む語の発音
- seat vs sit
- heat vs hit
- eat vs it
/iː/ と /ɪ/ のみ発音
- /iː/ vs /ɪ/
ひよこ
/eɪ/ と /ɛ/ の発音の区別
/eɪ/ の発音
gate, say, lay, pay, investigate
- /eɪ/ の /e/ は舌と唇の筋肉が緊張する緊張母音 = tense vowel です。
- 日本語の「エ」にほぼ近い音ですが、日本語の「エ」よりも舌の位置をやや高くします。
- 舌を緊張させて「エ」の後に軽く「ィ」を添えて「エ−ィ」と発音しましょう。
- 「エー」と伸ばしてしまう人が多いので注意しましょう。
/ɛ/ の発音
get, set, pet, said, kettle
- /ɛ/ は舌と唇の筋肉に緊張を伴わない弛緩母音(しかん母音) = lax vowel です。
- 日本語の「エ」よりもわずかに舌の位置を下げ、やや口を開き気味で発音します。
/ɛ/ と /e/ ( /eɪ/ ) は長さの違いだけでなく、音質そのものが異なることを意識しましょう。
らいおん
/e/ ( /eɪ/ ) と /ɛ/ を含む語の発音
- gate vs get
- say vs set
/eɪ/ と /ɛ/ のみ発音
- /eɪ/ vs /ɛ/
/æ/ の発音
/æ/ の発音
back, pass, sat, pack, habitat
- 「ア」と「エ」の中間程度の音色で、かなり長めに発音されることも多い音です。
- 口元を横に引き口角を上げるように発音しましょう。
- 舌は前寄りの低い位置で発音されます。
- アメリカ英語では /ɛə/ のように発音されることがしばしばあります。
この /æ/ の記号は ash と言います。
/æ/ を含む語の発音
- back
- pass
/æ/ のみ発音
- /æ/
ひよこ
中舌母音 (central vowel)
次は以下の3つの中舌母音を見ていきましょう。
- /ə/
- /ɚː/
- /ɚ/
/ə/ の発音
/ə/ の発音
lemon, consist, together, career, computer
- /ə/ は「曖昧母音」で、 schwa(シュワー)と呼ばれます。
- 一定の音色がなく、かなり音色の変動がある音です。
- まずは、曖昧な「ゥ」だと思って発音しましょう。千と千尋の神隠しの「カオナシ」というキャラクターを知っている人はその物真似をするつもりで発音してみましょう。
- 舌の位置は、口の「前後」という点からも、「高低」という点からも中央で、ほぼ真ん中の位置で発音されます。
- 口を半開きにし、舌・唇・ほほから力を抜き、脱力した状態で弱く、短く、曖昧に発音することを心がけましょう。
/ə/ の音色の変動は、発音の丁寧さ・速さ・前後の音・対応する綴り字などによって起こります。生英語を大量に聞き、ネイティブがどのようにシュワーを発音しているかのデータを自分の中で取っていくことも重要です。
以下では lemon と consist の単語レベルでの発音の後、lemon の -mon 部分のシュワーだけを取り出したパターンと、consist の con- 部分のシュワーだけを取り出したパターンの発音を聞いてみましょう。
/ə/ を含む語の発音
- lemon
- consist
lemon の -mon のみ vs consist の con- のみ
- -mon
- con-
/ə/ のみ発音
- /ə/
/ɚː/ の発音
/ɚː/ の発音
bird, purse, nurse, turn, hurt
- /ɚː/ はアメリカ英語特有の音です。
- 舌の左右のへりを上の奥歯に当てて舌全体を後ろに引きながら、「アー」と「ウー」の中間のこもった音を発音しましょう。
- 口をあまり開かず半開きにし、舌先は口腔内のどこにも接触しません。
/ɚː/ は強勢のある音節に現れ、/ɚ/ は強勢のない音節に現れます。
/ɚː/ を含む語の発音
- bird
- purse
- nurse
/ɚː/ のみ発音
- /ɚː/
/ɚ/ の発音
/ɚ/ の発音
percent, better, butter, master, letter
- /ɚː/ が短くなった弱母音です。
- 舌の位置、音質は /ɚː/ と同じと考えてOKです。
- /ɚ/ は弱母音なので短く発音されますが、語末ではしばしば長めになります。
らいおん
/ɚ/ を含む語の発音
- percent
- better
/ɚ/ のみ発音
- /ɚ/
後舌母音(back vowel)
次は以下の5つの後舌母音を見ていきましょう。
- /uː/
- /ʊ/
- /ʌ/
- /ɒː/ (または /ɔː/ )
- /ɑː/ ( /ɑ/ )
らいおん
/uː/ と /ʊ/ の発音の区別
/uː/ の発音
two, food, cool, noon, prove,
- /uː/ は舌と唇の筋肉が緊張する緊張母音 = tense vowel です。
- 日本語の「ウー」よりも唇を相当すぼめ、突き出しながら発音します。
- /uː/ の方が /ʊ/ よりも唇の丸まりが強いです。
/ʊ/ の発音
took, foot, book, put, good
- /ʊ/ は舌と唇の筋肉に緊張を伴わない弛緩母音(しかん母音) = lax vowel です。
- 日本語の「ウ」と「オ」の中間程度の音質に相当する場合が多い音です。
- 日本語の「ウ」よりも唇をやや丸めて発音します。
/uː/ と /ʊ/ は長さの違いだけでなく、音質そのものが異なることを意識しましょう。
/uː/ と /ʊ/ を含む語の発音
- two vs took
- food vs foot
/uː/ と /ʊ/ のみ発音
- /uː/ vs /ʊ/
/ʌ/ の発音
/ʌ/ の発音
cut, duck, come, country, luck
- 口をあまり開けずに短く「ア」と発音します。口を開き過ぎないことがポイントです。
- 日本語の「ア」よりも舌は高めで後ろ寄りで、しばしば後舌母音特有の暗い響きがします。
- しばしば「ア」と「オ」の中間程度の音色にも聞こえます。
アメリカ英語の /ʌ/ は舌の位置が中舌母音にかなり近く、中舌母音として扱われることもありますが、本ページでは後舌母音として扱います。
/ə/ に近い位置になることもしばしばで、/ʌ/ ≒ 強勢のある /ə/ 、と解説する音声学者もいます。/ə/ の音を少し強く言うイメージでも発音してみましょう。
/ʌ/ を含む語の発音
cut
duck
/ʌ/ のみ発音
- /ʌ/
/ɒː/ (または /ɔː/ )の発音
/ɒː/ (または /ɔː/ )の発音
talk, all, saw, autumn, law
- 「アー」と「オー」の中間の音を出すイメージで、日本語の「オー」よりも唇を少し丸め、口を縦に大きく開き発音します。
- 舌は日本語の「オー」よりはかなり低い位置にきます。
- アメリカの特に西部では若い世代を中心に /ɒː/ (または /ɔː/ )の音を /ɑː/ であてる人も多くいます。その場合、cot と caught は全く同じ発音となります。
厳密に言うと /ɒː/ は /ɔː/ よりも若干舌の位置が低いです。以下の単語は、アメリカ英語では舌がかなり低く、ア寄りに聞こえるため本ページでは /ɒː/ をメインで示します。
/ɒː/ の発音を含む語
- talk
- all
/ɒː/ のみ発音
- /ɒː/
/ɑː/ ( /ɑ/ ) の発音
/ɑː/ ( /ɑ/ ) の発音
pot, god, father, Chicago, Tom
- 英語の母音の中で最も口の開きが大きく舌の位置が低い音です。
- 下顎(あご)を下げ、日本語の「アー」よりも口を大きく開け、喉に近いところで「アー」(「ア」)と発音します。
- 唇を丸めず、口を縦に大きく開けて発音しましょう。
- /ɑː/ と /ɑ/ は長さのみの違いで音質は同じです。
なお、ɑ は非円唇・後舌母音で、ɒ は円唇・後舌母音です。
らいおん
father, calm, palm などを /ɑː/ とし、box, not, top を /ɑ/ として区別している辞書もありますが、本ページでは便宜上全て /ɑː/ で統一します。
/ɑː/ の発音を含む語
- pot
- god
/ɑː/ のみ発音
- /ɑː/
ここまでで前舌母音・中舌母音・後舌母音が完了です!
二重母音 (diphthong)
次は以下の5つの二重母音を見ていきましょう。
- /eɪ/
- /aɪ/
- /aʊ/
- /oʊ/
- /ɔɪ/
これら5つの二重母音の第一要素と第二要素は対等ではなく、第一要素の方が優位です。第一要素がはっきりと強く長めに発音され、第二要素が添えるように発音されます。
ひよこ
/eɪ/ の発音
/eɪ/ の発音
gate, say, lay, pay, investigate
- 第一要素 /e/ の方がはっきりと強く長めに発音され、第二要素 /ɪ/ が添えるように発音されます。
- 舌を緊張させて「エ」の後に軽く「ィ」を添え、「エ−ィ」のように発音しましょう。
- /eɪ/ の /e/ は舌と唇の筋肉が緊張する緊張母音 = tense vowel です。
- 日本語の「エ」にほぼ近い音ですが、日本語の「エ」よりも舌の位置がやや高いです。
- 「エー」と伸ばしてしまう人が多いので注意しましょう。
らいおん
前舌母音セクションで /ɛ/ も復習しよう!
/aɪ/ の発音
/aɪ/ の発音
tie, high, sight, buy, eye
- 第一要素 /a/ の方がはっきりと強く長めに発音され、第二要素 /ɪ/ が添えるように発音されます。
- 「ア−ィ」のように発音しましょう。
/aɪ/ の発音を含む語
- tie
- high
/aɪ/ のみ発音
- /aɪ/
/aʊ/ の発音
/aʊ/ の発音
how, cow, house, about, allow
- 第一要素 /a/ の方がはっきりと強く長めに発音され、第二要素 /ʊ/ が添えるように発音されます。
- 「ア−ゥ」のように発音しましょう。
- アメリカ英語では第一要素が /æ/ 寄りの発音になることも多いです。
/aʊ/ の発音を含む語
- how
- cow
/aʊ/ のみ発音
- /aʊ/
/oʊ/ の発音
/oʊ/ の発音
so, toe, no, home, road
- 第一要素 /o/ の方がはっきりと強く長めに発音され、第二要素 /ʊ/ が添えるように発音されます。
- 「オ−ゥ」のように発音しましょう。
- 第一要素 /o/ は日本語の「オ」とほとんど同じ音で発音して大丈夫です。
- 「オー」と伸ばしてしまう人が多いので注意しましょう。
/oʊ/ の発音を含む語
- so
- toe
/oʊ/ のみ発音
- /oʊ/
らいおん
第二要素が要素が本当に添えるだけ、くらいに聞こえることもよくあるよ!
/ɔɪ/ の発音
/ɔɪ/ の発音
toy, boy, join, soy, moist
- 第一要素 /ɔ/ の方がはっきりと強く長めに発音され、第二要素 /ɪ/ が添えるように発音されます。
- 「オ−ィ」のように発音しましょう。
- 日本語の「オ」よりも舌の位置が低く、唇を丸めて突き出し、しっかり口を開いて発音します。
/ɔɪ/ の発音を含む語
- toy
- boy
/ɔɪ/ のみ発音
- /ɔɪ/
r の二重母音 (r-diphthong)
次は r の二重母音5つを見ていきます。
- /ɪɚ/
- /ɛɚ/
- /ʊɚ/
- /ɔɚ/
- /ɑɚ/
全て母音の後に /ɚ/ の音が続く音です。
ひよこ
/ɪɚ/ の発音
/ɪɚ/ の発音
beer, hear, ear, appear, engineer
- /ɪ/ の後に /ɚ/ を続けて発音します。
/ɪɚ/ の発音を含む語
- beer
- hear
/ɪɚ/ のみ発音
- /ɪɚ/
/ɛɚ/ の発音
/ɛɚ/ の発音
pair, hair, bear, care, air
- /ɛ/ の後に /ɚ/ を続けて発音します。
/ɛɚ/ の発音を含む語
- pair
- hair
/ɛɚ/ のみ発音
- /ɛɚ/
/ʊɚ/ の発音
/ʊɚ/ の発音
poor, tour, sure, lure, moor
- /ʊ/ の後に /ɚ/ を続けて発音します。
/ʊɚ/ の発音を含む語
- poor
- tour
/ʊɚ/ のみ発音
- /ʊɚ/
/ɔɚ/ の発音
/ɔɚ/ の発音
door, core, horse, store, war
- 日本語の「オ」よりやや口を開いた /ɔ/ の後に /ɚ/ を続けて発音します。
/ɔɚ/ の発音を含む語
- door
- core
/ɔɚ/ のみ発音
- /ɔɚ/
/ɑɚ/ の発音
/ɑɚ/ の発音
car, bar, park, hard, heart
- /ɑ/ の後に /ɚ/ を続けて発音します。
/ɑɚ/ の発音を含む語
- car
- bar
/ɑɚ/ のみ発音
- /ɑɚ/
r の三重母音 (r-triphthong)
次は r の三重母音です。
- /aɪɚ/
- /aʊɚ/
r の三重母音は二重母音 + /ɚ/ と考えましょう。
ひよこ
/aɪɚ/ の発音
/aɪɚ/ の発音
tire, hire, fire, admire, desire
- /aɪ/ の後に /ɚ/ を続けて発音します。
/aɪɚ/ の発音を含む語
- tire
- hire
/aɪɚ/ のみ発音
- /aɪɚ/
/aʊɚ/ の発音
/aʊɚ/ の発音
tower, power, our, sour, flower
- /aʊ/ の後に /ɚ/ を続けて発音します。
/aʊɚ/ の発音を含む語
- tower
- power
/aʊɚ/ のみ発音
- /aʊɚ/
弱母音 (weak vowel / reduced vowel)
最後は弱母音です。
ここまで解説してきた母音は、完全母音(full vowel)と呼ばれ、第一強勢か第二強勢に強勢を受け、常に一定の明確な音色を持っています。
一方、弱母音は、常に弱強勢しか受けず、明確な音色をしばしば失い、変動し、短く、曖昧な音になります。
- /ə/
- /ɚ/
- /ɪ/
- /i/
- /ʊ/
- /u/
発話のテンポやスタイル・綴り字の関連などにより弱母音の音色はかなり変動します。
/ɪ/ /i/ /ʊ/ /u/ の音が明確な音色を失い /ə/ 化することもしばしばです。
弱母音 /ə/ /ɚ/ の発音
弱母音 /ə/ の発音
lemon, consist, together, career, computer
中舌母音セクションで扱った /ə/ と同じです。
弱母音 /ɚ/ の発音
percent, better, butter, master, letter
中舌母音セクションで扱った /ɚ/ と同じです。
弱母音 /ɪ/ /i/ の発音
弱母音 /ɪ/ の発音
music, edition, pocket, belong, ended
- 「ィ」というよりはまずは日本語の「ェ」を弱く言う感じで発音してみましょう。
- 前舌母音のセクションで扱った完全母音 (full vowel) の /ɪ/ ははっきりとした音色を持っているのに対して、弱母音 /ɪ/ ははっきりとした音色を持たず、曖昧な「ゥ」の響きを帯びることもしばしばです。
- /ə/ の発音と、どちらの発音を用いてもよい場合も多いです。
弱母音 /i/ の発音
happy, monkey, merry, movie, carry
- 日本語の「ィ」を弱く発音する感じで発音しましょう。
- 語末では比較的長めに発音されます。
弱母音 /ʊ/ /u/ の発音
弱母音 /ʊ/ の発音
today, argument, regular, soluble, singular
- 弱母音 /u/ と区別する必要はほとんどなく、日本語の「ゥ」を弱く言う感じで発音しましょう。
- /ə/ の発音と、どちらの発音を用いてもよい場合も多いです。
弱母音 /u/ の発音
actual, usual, valuable, habitual, continuation
- 弱母音 /ʊ/ と区別する必要はほとんどなく、日本語の「ゥ」を弱く言う感じで発音しましょう。
発音記号表:アメリカ英語の母音
ここまでの母音の発音をまとめると以下のようになります。
参考文献リスト
本ページは以下の音声学書籍を徹底的に比較して書きました。
特に参考にしたのは以下の4冊の書籍です。
英語音声学入門:竹林滋・ 斎藤 弘子
英語音声学入門:松坂ヒロシ
日本人のための英語音声学レッスン:牧野武彦
ファンダメンタル音声学:今井邦彦