らいおん
ひよこ
この記事ではシャドーイングとは何かから始まり、シャドーイングの手順、効果が上がるやり方、上がらないやり方、なぜシャドーイングが良いか科学的に学べる書籍紹介まで、シャドーイングについて知っておくべきことを網羅的にカバーします。
可能な限り箇条書きで整理しているので、少し長い記事ですが時間がない方もサクッと読める記事になっているはずです。
YouTube「らいおん英語チャンネル」と完全連携していて、シャドーイング解説動画だけでなく、動画PDFスライドも載せているのでシャドーイング全体像把握にぜひお役立てください。
サラ
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シャドーイングとは
知っている人も知らない人も、まずはシャドーイングとは何か、ざっくり見ていきましょう。
- もともと通訳者のトレーニング
- 近年英語学習者の間でも効果的な学習方法として認知されている
- 基本的な方法は、「聞こえてきた音を、音源のスピーカーよりも約0.5秒程度遅れて真似する」
- シャドー ( = 影) のようにスピーカーについていくため、シャドーイングと呼ばれる
- 効果はバツグンだが、シャドーイング効果を最大化できていない学習者も多い
らいおん
シャドーイングがなぜ良いか
英語学習者なら誰しも一度は聞いたことがあるであろう「シャドーイング」。「シャドーイング」と検索すればたくさんの記事が出てきますし、書店でも「シャドーイング」というタイトルの本がたくさん見かけるようになりました。しかし、シャドーイングはなぜ英語学習に効果的なのでしょうか?
流暢性・発音向上に効果的
まずはなんと言っても流暢性・発音向上に効果的です。
- 母音・子音のセンテンスレベルでの発音練習に最適
- 音のつながり(リンキング)・弱化(リダクション)などに強くなり、一息で言えるカタマリを長くできる
- イントネーション向上に効果的。英語の強弱の感覚に敏感になる
→ 弱く発音すべき音を弱く発音できる
→ 強く読むべきところが強く発音できる
らいおん
聞き取れないと当然シャドーイングできないので、リスニングに効果バツグン
聞こえてきた音をシャドーイングする必要があるので、言うまでもなくリスニング力向上に効果を発揮します。
ひよこ
カタマリ・切れ目に対する意識が格段に上がり、リーディング力の速度向上にも効果的
シャドーイングをする時は、ある程度のカタマリ=チャンクを意識するようになり、カタマリで読めるとリーディングの速度も向上します。
科学的なシャドーイングの効果
科学的になぜシャドーイングが効果的なのか、深く理解したい人は以下の門田修正先生の書籍がおすすめです。3冊とも専門的な話を誰にでも理解できるように解説してくれています。
外国語を話せるようになるしくみ シャドーイングが言語習得を促進するメカニズム
音読で外国語が話せるようになる科学 科学的に正しい音読トレーニングの理論と実践
シャドーイング・音読と英語コミュニケーションの科学
ここまで聞くと良いことばかりだね…!でもシャドーイングのやり方ってイマイチ分からないな。
ひよこ
らいおん
そうだね。やり方が分からないままシャドーイングをしてる学習者も多いよね。
まずはシャドーイングのやり方全体像を確認しましょう。以下のステップに沿って行うのがおすすめです。
シャドーイングのやり方全体像
以下の7つのステップでシャドーイングを行うのがおすすめです。
- Step 1: リスニング
- Step 2: 仕込み
- Step 3: マンブリング
- Step 4: 音取りシャドーイング
- Step 5: 意味取りシャドーイング
- Step 6: 発音・プロソディシャドーイング
- Step 7: シャドーイング
らいおん
Step 1:リスニング
- スクリプト見ないで 1 回〜 3 回程度聞く
- どの程度聞けるかチェック
- このステップを省いて仕込みにいってもOK
ひよこ
Step 2: 仕込み
- 音チェック
- 意味(語彙・文法・構文)チェック
- 発音記号チェック
- スクリプト無しで全ての音が聞こえるまで聴く
らいおん
Step 3:マンブリング
- マンブリング = ぶつぶつとつぶやくこと
- 口の動きは最小限でかまわない
- 発音やイントネーションなどそれほど気にせず、口を動かして「どのくらい音についていけるか」を試す
ひよこ
Step 4:音取りシャドーイング
- ここから本格的なシャドーイング!
- しっかり口の筋肉を動かし音が取れるかのみに集中
- 意味や発音はそれほど気にしなくて大丈夫
- 「スクリプトを見ずに音源に最初から最後まで ついていける」ことがここでの目標
らいおん
Step 5:意味取りシャドーイング
- 意味 ( 語彙/文法/構文含む ) のみ集中
- 前から返り読みせず自然に「意味」が取れるかにフォーカス
- 発音はそれほど気にしなくてOK
ひよこ
Step 6:発音・プロソディシャドーイング
- プロソディ (prosody) とは、リズム(rhythm / 緩急・間・テンポ)、ストレス(stress / 強弱・強勢・アクセント)、イントネーション(intonation / 高低・抑揚)など音楽的要素全般 (musicality) のこと
- 発音とプロソディに集中してシャドーイングする
- 切れ目を真似る、音源がどこからどこまで一息で読んでいるか息継ぎの場所も意識する
Step 7:融合シャドーイング
- Step 4「音取りシャドーイング 」、Step 5「意味取りシャドーイング 」、Step 6「発音・プロソディシャドーイング」を全て融合するイメージでシャドーイングする
- 徹底的にやり込む。音源を勝手に覚えてしまうくらいやり込む
らいおん
「音取り」「意味取り」「発音・プロソディ」シャドーイングは、行ったり来たりして練習してまったく問題ありません。
Step 1 – 7 が1週間で無理なくこなせないなら音源の難易度が合っていない可能性が高いです。
OK!やり方は分かったからもうこれで余裕だね!
ひよこ
らいおん
そうだね、ここまでのステップを意識するだけでもだいぶ違うよ!ただ、シャドーイングは気をつけたいことが他にもあるんだ。
そうなの?!
ひよこ
らいおん
「それってシャドーイングって言えますか?」ってツッコミたくなるような、効果があまり上がらないやり方でシャドーイングを行ってる人もいるから気をつけよう!以下で注意点を見ていくよ!
「それってシャドーイングって言えますか?」チェックポイント:効果が上がらないシャドーイング
らいおんが「それってシャドーイングって言えますか?」と呼んでいる、「効果があまり上がらない」かもしれないシャドーイングを見てみましょう。
- 音源のスピーカーに最初から最後まで遅れずついていけたから もう終了。
- 最初から最後まで噛まないで言えるようになったからもう満足。
- 通勤時間の電車で小声だけど口を動かしながら何度も練習したし音源についていけてる。
- 今日は1日中練習した、合計500回以上も練習したからもうOK。
- 1日では不十分なので3日連続で何度も練習したからもうOK。
- 発音記号をところどころ調べてないけど多分スムーズに言えてるのでOK。
らいおん
ひよこ
らいおん
効果が上がるシャドーイング
以下の点に注意してシャドーイングすると効果的です。
- 最大のポイント:1セットが15分〜45分程度のシャドーイングの「セット数」と「練習日数」を増やす
- 1回のシャドーイング時間は長くても30〜45分にとどめる
- 「ぶっ続けで3時間シャドーイング」より 「15分を朝・昼・夜3セット」行う
- 同じ素材を1週間は毎日やり、1週間で「仕込み・練習」サイクルを繰り返す
- 1週間サイクルで次の素材へ
- シャドーイングをする時は「大きな声を出すことができて、恥ずかしがらず何回も失敗できる」場所でやる
- 電車などの声が出せない場所ではシャドーイングはしない(リスニング目的ならもちろんOK)
- 一定時間巻き戻し可能なオーディオプレイヤーを使用する → IC レコーダーを強く推奨
- 可能なら他人にシャドーイングを披露する
- シャドーイングを披露し、発音などに関してフィードバックをもらう
- 上級:毎音源勝手に全部覚えてしまうところまでやり込む
ひよこ
らいおん
シャドーイングが上手くできない理由①:インプット力とアウトプット力の「ギャップ」
シャドーイングをやったことがある人なら、「なんでこんなにゆっくりな音源がうまくシャドーイング真似出来ないのだろう」と感じたこともあると思います。
「聞き取りはできるがシャドーイングになると速すぎて全然真似できない」「それほど音源が速い感じはしないけど、シャドーイングしようとすると全然ついていけない」など、これはなぜでしょうか?
理由はインプット力とアウトプット力の「ギャップ」で、音読で外国語が話せるようになる科学(門田修平著)では、
と説明しています。
そのギャップを埋めていくように練習することが重要で、そのことがスピーキング力を向上させる、とイコールとなります。
シャドーイングが上手くできない理由②:発音の知識・スキルが不十分
シャドーイングの性質上、発音の知識・スキルが不十分だと効果が十分に得られません。
このことは多くの人が軽視しているかもしれませんが、例えば、flap t や無開放の閉鎖音 [p, t, k, b, d, g]、リンキング、リダクションなど、正しい発音の知識を持ち、発音ポイントや、気をつけるべき発音を意識しながらシャドーイングしているか、でシャドーイングの効果は大きく変わってきます。
ひよこ
らいおん
フィードバックをもらうことが重要
よって、発音に関して自分自身でしっかりと自己分析(モニタリング)し、セルフフィードバックをすることが重要なのですが、問題は、発音は自分では自分の発音の癖になかなか気づけない、ということです。
誰か発音の先生から発音のフィードバックを受けると良いでしょう。可能ならしっかりとした発音矯正レッスンを受けるのがおすすめです。
- 一人ではなかなか気づけない癖は人から指摘されれば効率よく矯正できる
- 時間の短縮になる
- 不自然な発音・不正確な発音が何かが明確に分かる
- 自分の発音の癖が分かり、どう直していけばいいのかの道筋が分かる
- 発音の知識を効率よく学べる
- 気をつけるべき発音ポイントを効率よく学べる
らいおん
歯並びを良くしたいなら歯医者で矯正するのと同じで、中学英語終了程度の英語力があり発音を良くしたいならレベルに関わらず発音矯正を受けてみよう!
その他のチェックポイント
ここまで説明してきたこと以外にも、以下の点を疎かにしているとシャドーイングの効果が上がらないかもしれません。チェックしてみましょう。
- 冠詞・複数の s の抜け、前置詞読み間違え、など細部への意識が甘くないか
- 音源のレベルが合っているか
- 仕込み(単語の意味だけでなく発音記号チェックなども)は甘くないか:文構造・英文・語彙・発音の理解が不十分な箇所はないか
- [初級者] 文法の知識は足りているか:大学受験標準レベルの文法が必須
音源の適切な長さは?
次はシャドーイング素材の適切な音源の長さを見ていきましょう。
1分30秒~2分30秒程度
ここまで説明してきた流暢性・発音向上・リスニング向上・英語脳形成のためのシャドーイングは1週間に1分30秒〜2分30秒程度のものをやり込むので十分です。
特殊な目的のシャドーイングなら5分以上もあり
リスニング向上などの目的の extensive shadowing、通訳者などの特殊な目的のシャドーイングやマンブリングなどを行う時は5分以上のシャドーイングに挑戦することもあるかもしれません。しかし、一般学習者は1週間で1:30秒〜2:30秒をシャドーイングするので十分でしょう。
らいおん
レベルに合った適切なシャドーイング素材を選ぶ:音源のおすすめは?
最後に、シャドーイング音源の素材はどうすればいいかを見ていきましょう。
シャドーイング音源は、基本的に自分のレベルに合っているものなら何でもOKですが、特別にやり込みたい素材がない場合、まずは「英検のリスニング問題」でシャドーイングするのがおすすめです。
- どの級も「会話」と「1人のスピーカーの話」の両方をバランスよくやる
- 英検準2級・2級はどれをシャドーイングしてもOK
- 準1級と1級は Part 1, Part 2 のみで基本OK
- 特に準1級と1級は Part 1, Part 2 をバランスよくシャドーイングしたいが、特に Part 2 をやり込むと良い練習になる
らいおん
ひよこ
以下に英検リスニング問題でシャドーイングするときのザックリ目安を載せます。
- 1級挑戦 – 合格レベル / TOEIC800 – 950以下程度 → 1級
- 準1級挑戦 – 合格レベル / TOEIC700 – 800程度 → 準1級
- 準2-2級挑戦 – 合格レベル / TOEIC500 – 600点台 → 準2・2・3級
ひよこ
らいおん
- 英検教材は北米英語・イギリス英語が混ざっているので、どのアクセントかをしっかり意識しよう。
- 特に準1・1級の Part 2 は米語・英語のどちらかに絞ってシャドーイングする。
ひよこ
らいおん
シャドーイングを本格的に習いたいという方はらいひよの一番人気、シャドーイング特訓がおすすめです。
教材英語からの脱却
英検教材はとてもおすすめですが、やはり「教材英語」であることが弱点です。
目安として、英検1級シャドーイングが楽になったら「教材脱却」開始時期です。
生英語素材でシャドーイングへ
英検1級シャドーイングが余裕なら、次は「時事英語」に慣れていき、並行して、「生英語素材」の量を徐々に増やしていくことが重要です。以下のようなイメージで自分のレベルに合った素材でシャドーイングするといいでしょう。
英検1級・準1級・2級・準2級・3級など自分のレベルに合った素材
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英検1級合格、かつ、TOEIC950以上レベル、かつ、1級シャドーイングが余裕
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Japan Times ニュース教材など + TEDトークなどを並行
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より難易度が高く自分の興味・目標に合っている生英語素材
らいおん
ひよこ
- ニュース英語はいきなりシャドーイングするのは難易度が高くおすすめしないので Japan Times などの教材を「つなぎ」として使いましょう。
- 生英語素材で最もシャドーイングしやすいのはTEDトークです。
- ただしスピーカーによってかなり難易度が変わるのと、ノンネイティブのプレゼンターもいるので注意。
- アメリカ/イギリス英語がまだ上手く判断できないなら、プレゼンターをGoogle検索などでプロフィール確認し、自分の真似したいアクセントの音源を選ぶようにしましょう。
らいおん英語チャンネルYouTube動画 + スライドPDF
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シャドーイングのやり方・コツ解説 Part 1
シャドーイングのやり方・コツ解説 Part 2
シャドーイングのやり方・コツ解説 Part 3
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